薬研は常に手袋をしている。布に包まれている薬研の両の手には酷い火傷の痕が残っていた。薬研は醜い自分の手を見たくなくて手袋で隠していたのだ。

「…厚、楽しいか?俺っちには醜い汚い手にしか見えねえけど」
「醜くも汚くもねえよ」

厚が薬研の手を優しく包む。壊れ物を扱うかのようにそっと触れる。優しく、優しく、薬研の手を撫でて暖かい体温で再び包み込む。厚が薬研の手を触るのはよくあることだった。

俺は見たくもねえのに厚は俺の思うことも無視して手袋を外す。

「薬研の手は綺麗だ」
「俺っちにはお世辞にも綺麗には見えねえけど」
「綺麗だよ。これは薬研が戦ってきた証しなんだから。薬研の記憶であって歴史なんだから」

厚の見せた柔らかい笑顔に薬研は目を見開く。厚は柔らかく笑うことはあまりない。苦手らしかった。そんな厚の表情につられ、薬研も笑った。

「厚にそんなこと言われたら、この手を嫌いにはなれねえなぁ」









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -