※色々注意



本丸に違和感を感じた。いつものように弟たちは楽しそうに庭を走り回っているし、兄たちも他の刀剣たちと作戦を立てたり休憩をしていたり、と何も変わらないのだけれど。何がおかしいと聞かれても分からないけれど、少し怖かった。

「厚兄さん、どうかしましたか?」

心配そうに見上げてくる五虎退に、何でもないと笑って頭を撫でてやると五虎退の顔が明るくなった。
弟を不安にさせたくなくて、黙って一緒に虎を撫でていた。でも、やっぱり変な感じがする。





「入れ替わってるとかじゃねえか?」
「入れ替わる?」
「ほら、普段は二振り目が来ても付喪神は呼び出されずにそのまま刀解されたり、他の刀の戦力強化に使われたりしてただろ?」
「今は入れ替わってる、ってことか?」
「大将が何考えてるかは分からねえが、きっと意味のあることだろ。あんま気にする必要はねえよ」
「…そっか」

薬研はそう言ったけど、オレは割りきることができなかった。同じ付喪神でも、今まで過ごしてきた奴ではないし、それに今まで過ごしてきた奴らはどこへ行ったのか。


最近は、弟たちや兄たちにも違和感を感じるようになった。見ていると胸の当たりが苦しかった。だけど、薬研だけは別だった。
気付けば本丸のほとんどの刀剣たちが入れ替わっていた。いつの間にか残っているのはオレと薬研だけ。息苦しくて堪らなかった。我慢できないときは薬研のところで過ごした。

「…オレもう、無理だ」
「何言ってんだ、厚。俺っちがいるじゃねえか」
「だけど、」
「俺っちを一人にはしねえよな…?」
「ごめん、薬研…」
「一人なら辛いかも知れねえけど、俺たち二人なら大丈夫だろ」
「…うん」

ニッと笑う薬研はちょっと久しぶりで安心してオレも笑った。オレたち二人なら何とかやっていけそうだ。


そのとき奥の部屋から「逃げろ」という苦しそうな声が聞こえたような気がした。










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