俺っちと厚は兄弟だ。俺たちは刀だから人間とはまた違うが、互いに信頼を置いていることは確かだ。


「薬研、大将に団子貰ったけど食う?」
「は、当たり前だろ。お前に独り占めされちゃたまんねーよ」
「独り占めなんてしないけど」
「…分かってる」

厚は俺から見てもいい兄貴分だった。小さい弟たちも慕う理由が分かる。常に自分より人を優先して。

「ホント、兄貴だな」
「薬研今日何かあったのか?」
「…いーや、大したことじゃ」
「今オレしかいないし、話くらい聞くぜ?」
「っ、ああ、もー!これだから厚は〜!」
「は!?」

ドサッと音を立てて厚の上に覆い被さった。厚が俺の下にいるってことが嬉しかった。

「…昼間からなんなんだよ」
「俺っちも厚に甘えてぇ」
「………ったく」

ほら、と手を広げた厚に飛び付く。厚はぽんぽん、と俺の頭を叩いて、何も聞いては来なかった。

「…薬研も可愛いとこあるよなぁ」
「厚には甘えてぇの」
「オレでいいならいつでも頭撫でてやるよ」

厚の手は暖かい。もともと体温が高いとかそういうことじゃなくて、とにかく暖かいんだ。理由はよく分からないが。

「…厚」
「なに?」
「好きだぜ」
「……分かってる」

厚は小さく笑って俺の頭を再び撫でた。





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