愛くるしい 逢い苦しい
by kakashi





…やっぱりか、と思った。
はじめはまさかとは思ったけれど、どう見たって似ていた。
金髪に碧い瞳。性格こそこんな馬鹿じゃなかったけど、時折見せる芯の強さはそっくりだった。

だけど血が繋がっているとはいえ、今目の前にいるコイツはコイツで。

…かつて愛した人ではない。

それなのに、ふいに振り向いた瞬間や力強く立つその背中が。
どうしてもあの人に見えてしまって。

そんな自分に腹が立つ。

「先生ー!今日はどんな任務だってば?」

無邪気に寄ってくるコイツに悪気はないのに。

どうしてお前はあの人の子なの。

そんなことすら、思ってしまって。


「カカシ先生…?なんかあったのか?元気ねえってばよ」

そのくせ、表情にも現れているらしい自分に嫌気がさしてしまう。

「いや、別になんにもないよ。すまんな」

言えば心配そうに覗く碧い瞳。
その瞳を真っ直ぐ見れなくなったのは、もうだいぶ前からで。
自来也様と修業から帰ってきて初めて会った時からだった。
幼い頃はまだ良かったのだ。あの人の面影も、あまりなかったから。

それが修業から帰ってきたときには、もう。
危うくその逞しくなった腕を、自分の方へと引いてしまいそうになった。

もう忘れられたと思っていたのにやっぱり捕らわれていた。
なに一つ忘れてなんかいない。
あのぬくもりも優しさも、強さも。全部断ち切ったつもりだった。
目の前にいるコイツがあの人の息子だろうとそっくりだろうとあの人ではないのは確かだ。

もう誰も人を愛さない。あの人で最後だと、決めたのに。

「…先生、本当に大丈夫か?」

向けられる視線の中に、いつの日か欲情の熱を感じたのだ。
俺がただ、あの人をナルトに重ねてしまうだけならばまだいい。気持ちのブレーキは掛けられる。
なのにそれだけじゃなく、ナルトが俺を見るその視線が、俺があの人を見るソレと一緒だと気付いてしまって。


(こりゃ…参ったね…)

と思うのだけれど実際それどころではない。

今もほら、心配そうにだけど熱く送られる視線。その先の碧い瞳が揺れるたびに、手を伸ばしたくなってしまう。

「な〜にそんな顔してるのよ」

ナルトに、触れたいと思ってしまう。

「何でもないって言ってるでしょ。ホント馬鹿だね、お前は」

制御が効かない。
頭では分かっているのに体が勝手に動いてしまう。

伸ばした手がナルトに触れる。

「ば!馬鹿とはなんだってばよっ!!」

触れたのはその綺麗な金髪で。あの人よりも少し硬めの髪質の先からじわりとナルトの熱を感じる。
馬鹿って言うな!なんてまくし立てておいて、真っ赤に染まる頬は隠されていない。
その様子に嬉しいと心が弾んでしまう自分がいて。

(俺ホント…何してんの…)

誰も愛さないと決めた。あの人しか愛さないと。もしも誰か、違う人間を愛してしまったらそれはあの人を裏切るようで。

(お前に逢うと苦しいよ、ナルト)


例えそれがナルトでも、愛さない。愛せない。

だけどこのままでは絶対に高い確率で、俺はナルトを好きになる。
あの人に似てるから、それが一番の理由かもしれないけれど。

それでもナルトを好きになる、と分かってしまった場合はどうしたらいい?

答えなんて聴こえるはずもない、だけど空はこんなにも透けるように碧かった。

あの人が、見ているような気がした。






continue...






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -