歌い終わってゆっくりと目を開けると、呆然としたSクラスの人たちの顔が目に入った。
不安になってちらりと学園長を見ると、不適に微笑んでいて、思わず口の端が引きつった。
「うまくいっただろ。」
しれっとした顔でそう言い楽器をしまい始める陸ちゃんの器の大きさに私はドン引きだよ。


いそいそとピアノを片づけ教室を出ようとしたが、服の裾を引っ張られて止まる。
「…お前らさ、なんでBクラスなんだよ。」
真剣な目でじっと見つめてくる翔ちゃんに思わず「…え?」と返すとジト目(というなの上目遣い)で睨まれる。
「なあ、どうしてだ?」
そんなこと私に聞かれてもわかんねーよ。
…とは言えないので苦笑いしながら、陸ちゃんの足を踏む。
なんとか言えよとぐりぐりしていると、彼はフッと鼻で笑い、睨み続ける翔ちゃんに吐き捨てやがった。

「お前には関係ないだろ?」



  ∴  ∴  ∴



「もう!どうしてあんなこと言うの?」

ぐいぐいと力強く引っ張られようやくBクラスに戻ってこれた。
少女漫画のヒロインっぽく"もう"と言ったところで可愛さなんて持ち合わせてはいないが、陸ちゃんのことを白目にならないように気をつけながら私なりに全力の上目でみつめる。

「…っ、つい言っちゃったーみたいな?」

あはは、とらしくもなく空笑いする陸ちゃんの様子がおかしいのは幼なじみの目で見ても当然のことで、思わず不安になる。

「…なにか事情でもあるの?」

そっと腕をつかみながら問うと、彼はまた不自然に笑顔を浮かべて「大丈夫だよ」と言った。
私の手をゆっくりと包み込む彼の白い手が小さく振るえていた。








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