ふう、と息を吐いてピアノの椅子から降り頭を下げる。
「ご静聴ありがとうございました。これからよろしくお願いします。」
たくさんの拍手に包まれる中、ちらりと幼なじみ二人を見ると柔らかく笑って拍手してくれていたからどうやら成功したらしい。
ああ、よかった。と一人呟き自席に戻るために歩きだした。
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歌ったのは「ハジメテノオト」。 弾いてみたのピアノ演奏が忘れられなくて、何回も練習したからか弾けるようになっていた。
「上手く歌えてた?」 ドキドキしながら幼なじみ二人に聞けば陸ちゃんは頭を撫でてくれた。 先生のとき同様きゅんきゅんした。
奏君はにやり、とどこか含みのある笑みを漏らしていた。
私は取り敢えず上手くいったようでよかった…という安心と、二人は何をするんだろう、という期待で頬が緩むのを感じた。
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▼anotherviewpoint
「…うまく聞こえたかな?」
なまえに聞こえないようにそっと奏に呟く。
ちらりとなまえの方をみた後、俺に視線を戻してにやりと笑う。
「…ああ、多分バッチリ。」
そういいつつも奏はまた笑う。 俺自身、結構性格が悪い方だと自覚しているが、こいつも多分同レベルの性悪野郎だと思う。
「…だよな!」
なまえは気づいていないようだったけど、なまえの発表は多分隣のクラスに聞こえていたと思う。
俺達はBクラスだが、それはあくまでも"設定"があるからだ。 …俺は馬鹿じゃない。 色んなメリット、デメリットを踏まえ総合的に考えた結果、「キャラがいて、レベルの高い生徒が集まるクラス」と「レベルは多少低いがキャラがいないクラス」、好きな方を選べといわれたら後者を選ぶのが賢い選択だろう。
今回の目的は「BクラスにもSクラスに相応するレベルの生徒がいる」ことを先生生徒問わずに理解させることだ。
向こうの歌が聞こえて、こちらの音が聞こえないなんて話はないだろし、調度よかった。
この世界のお姫様様は七海春歌だが、俺達のお姫様はみょうじなまえだ。 こういうとあれだが、俺はなまえと奏さえいてくれればそれでいい。 外野に興味なんてないんだ。 なまえに恋愛感情を抱いたことはないからキャラと結ばれようが俺は構わない、…笑ってさえいてくれれば。
いうならば俺にとってこれはなまえのためだけに組まれたゲーム。 お姫様を笑顔にするための手段にすぎない。
奏も考えは同じ様で「まあ、しばらくは様子見だね。」というと「…いざとなったら…、」と切り出してきた。
「わかってる、キャラであろうがモブであろうが容赦しねえよ。」 にっと笑って返すと奏は満足したように顔を伏せた。寝る気なんだろう、多分。
「俺達の世界の中心は常になまえなんだなあ…」
さあ、楽しもうか、お姫様?
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二人は病んではいません。ヒロインを溺愛しているだけ。 家族愛や兄妹愛に限りなく等しいものですので恋愛要素はありません。
トリッパーなんかで頭弱い子きても大丈夫なように調整してたんだよって話。
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