私は木の根元にあることを知っていたから、少し探した振りをしてから鍵を本格的に探しはじめる。


きらり、と光った装飾の綺麗なそれを見つけ彼に渡す。


「これ、ですか?」

ぼーっとしていた彼は私の言葉にはっとしたように一度目を見開いた後、「え、ええ。ありがとうございます。」なんて吃りながら言った。


その後はじーっと私を見つめる。


あまりにもじと目なので耐え切れず


「どうかしましたか、」
と聞くと彼は「いえ、なんでも。」と顔を逸らす。


よくわからない人は放置に限るが、先にお礼をもらっておこう。

当初の予定はもう諦めよう。無理だよ、初日から壊れたもん。


「あの、」

声をかければ彼はぴく、と肩を揺らし振り向く。


「お礼。」

「え?ああ、私の名前、でしたか?」

「はい、教えてください。」

にこっと陸ちゃん仕込みの営業スマイルを振り撒く。
「一ノ瀬トキヤです。貴方は?」

にしても良い声だなあ、さすが宮野さんだなあ。音也との掛け合い生で聞けたりしないかなあ。

「みょうじなまえです。」

「クラスまで送りますよ、どこですか?」

え、なにそれ美味しい。
でも校内覚えたいからなあ…。

「いえ、大丈夫ですよ。じゃあ!」


ばいばい、と口には出さず手を軽く横にひらひら振る。
やっとイケメンから解放されたよ、長かったなあ。
なんて溜息をついた。
全く、あの二人に置いていかれさえしなければ…まあ、わざとじゃないんだろうけど。
許してあげようか。



「お疲れ!ちゃんとフラグ立ったみたいでよかったー」
にこにこ笑う陸ちゃんに私が殺意を覚えたのは言うまでもない。










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