私、みょうじなまえはあまりイケメンが得意ではありません。
そりゃあ仮にも私は女の子だ。嫌いになることはないけど苦手だ。
いや、理由は両隣にいるイケメン様たち(ただしBレベル)なんですが。 イケメンの近くにいると女の子の目がレーザーを放つ。Bレベルといえど私の両隣はイケメンに間違いないわけで、中学のときはそりゃあもう…。 なのでこれからは両隣は別として、イケメンには関わらない方向でいこうと決めた。 目標はキャラと関わらない。 幸いクラスはB。キャラはいない。先生も薄いし大丈夫だろう。 もし神宮寺さんと関わったりしたらSクラスからレーザー祭で私は穴だらけになる。いるであろう春歌ちゃんに任せて私は下がっておこう。
うんうん、と一人で相槌を打っていると両隣の二人がいないことに気づいた。
「お、置いていかれた…?」 あわあわと周りを見渡し、本当に置いていかれたことを悟る。
はあ、と溜息を吐いて前を見るとでかい建物。
「で、でっかー…。」
少し見上げてから校舎への道を歩いているとふと何かを探しているような人影を見つけ、声をかける。
「どうかしたんですか?」
そういえばうたプリにこんなイベントあったなあーあはは、…うた、プリ?
ま、待て私、ここうたプリの世界。 入学式に探し物なんて…!
「ええ……ちょっと……。寮の鍵を落としてしまって」
聞き覚えのある声。
え、あ、ちょ、やだ。
振り向いた彼、一ノ瀬トキヤに体が硬直したのがわかった。
彼は私の様子にぴくりと眉を寄せた。HAYATOだと思って固まったと思ったのだろう。 やけに頭の中だけ涼しい私はぼうっと固まったまま考えた。
「…あの、」
一ノ瀬さんが近づいてきて思わず後ずさる。
「そ、そそれは大変ですね!」 一刻も早くフラグを折らなければ、私は、私は、
「ええ、…手伝っていただけませんか」
「え、嫌です」
「……は?」
「嫌、です。
嫌がられるとは思わなかったであろう彼がぽかんとした表情をする。 め、珍しい。レアモノだ、プレミアムだ。
なんて思いながら「じゃあ私はここで」と振り向くと肩をがっと掴まれる。 な、なに急に、なん?! あ、でもあくまでも落ち着いて…
「な、なんですか。」 ち、ちょっと裏返ったああああ! 恥ずかしい!なにこれ!?超恥ずかしい! なんて一人で悶えていると一ノ瀬さんがぽつりと呟く。
「HAYATO…」
「はい?」
「HAYATOはご存知ですか?」
あ、なに自分からタブーいじってんの?この人。
「ええ、まあ。」
「私は、HAYATOの双子の弟です。」
知ってます。…とは言えないか。
「へえ、そうなんですかー…」
「さ、サインを頼んであげても…」
なんなんだ、この人。よくわからないや、どんだけHAYATO宣伝したいんだろう。 あれ?でも確か一ノ瀬さんはHAYATOが嫌いなはずじゃ…まあいいか。
「そんなに鍵探し手伝ってほしいんですか?」
「……。」
ふと切り替えせば彼はまた眉を寄せる。 私がサインほしさに切り替えしたと思ったのだろう。 確かに我ながらタイミングがKYだった。
「サインは別にどうでもいいので、後で名前教えてください。」
「?…HAYATOのですか?」
「あなたの、です。」
またきょとんとする一ノ瀬さん。
あれ、なんか可愛い。
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