一つ年上の幼馴染。昔は隼人くんも交えてよく三人で遊んでたけど、大きくなるにつれてそれは減っていった。
隼人くんが男友達と通学するようになって、それと同時になまえちゃんも近所の女子と通学するようになった。オレは近所に仲のいい友達がいなかったから、一人で通学するようになった。だけどなまえちゃんはすぐにそれに気づいて、女子のと通学をやめてオレと二人で通学するようなった。多分そのときから、オレはなまえちゃんのことが好きだ。


「なまえ、最近ちゃんと飯食ってないんだよな」
「夏バテ?」
「いや、多分違う……っていうか、結構前からかもしれない」
「なんで隼人くん気づいてなかったの?」
「………ごめん」

ごめん、ってなんだそれ。少し責めるような口調で言うと、隼人くんは申し訳なさげに声のトーンを落とした。隼人くんがオレのこんな口振りを受け入れるのは、オレがなまえちゃんのことが大好きなのを知っているからだ。たぶん恋愛的な意味だとは思ってないけど。
ハコガクは秦野からちょっと遠くて、なまえちゃんも隼人くんも寮に入っている。だからそんな頻繁には会えないし、連絡を取れる時間も限られている。なまえちゃんはなまえちゃんで忙しいだろうから、こうして隼人くんから様子を伺っているっていうのに。
そう思うと、無性に腹が立った。こんなに近くにいるのに、どうしてもっと心配してやらないのか。兄貴ヅラしてるのは家だけかよ。文句を言うと、返す言葉もなかったのか隼人くんは黙り込んでしまった。そうされるとオレももうなにもできないので、無言のまま通話時間だけが増えていく。意味のない通話は、オレが母さんにメシだと呼ばれるまで続いた。


なまえちゃんはたぶん、隼人くんのことが好きだ。いつからか隼人くんのことを見る目が変わって、べたべたと甘えるようになった。その目はなまえちゃんを見るオレの目と全く同じで、そういうことなんだなと自分のことなのに客観的にその三角関係を眺めていた。
オレは極力なまえちゃんにこの気持ちを悟られたくなくて隠していたけど、なまえちゃんはそうではなかった。むしろ好きを、性を全面に押し出して隼人くんを誘惑したがっていた。中学生の目にはまぶしすぎるような肌を見せびらかしたり、短いスカートでソファに寝転がったりする。その様子にも隼人くんは動じず、「風邪引くぞ」とか言うだけだった。それがなまえちゃんのイライラを募らせたらしく行動はだんだん大胆になっていく。それを見てオレは、とてつもなく興奮した。好きな子の肌、髪、下着、胸、身体。当時小学生だったオレのことは全く意識していなかったらしく、なまえちゃんは無防備に振舞った。オナニーを覚えたばかりのオレは隼人くんからもらったエロ雑誌を早々に捨て、記憶の中のなまえちゃんで何回も抜いた。前かがみになったときに見える胸元、惜しげも無くさらされる太もも、挑発的に誘惑するような下着のライン。若さのせいで猿並みの性欲があったオレは毎日なまえちゃんをおかずにして抜いた。罪悪感はあったけど、それ以上に興奮が勝る。なまえちゃんを見かけるたび、頭の中で押さえつけて無理矢理行為に持ち込んで、それでまたオナニーした。

なんとなくだけど、なまえちゃんがメシを食わないのは隼人くんのせいだと思った。
隼人くんのせい、ってのはちょっとおかしいな。隼人くんのため、みたいな。なまえちゃんは隼人くんに構われたがっているから、気を引くためにそんなことをしてるのかもしれない。
そう考えて、オレじゃあダメなんだなと心の奥で察した。オレがきっと何を言ってもなまえちゃんは不健康な生活をやめない。隼人くんが無条件になまえちゃんに構うようにならなければダメなんだ。それってつまりオレの完璧な失恋ってことで、なまえちゃんには健康でいて欲しいけど隼人くんと付き合うとかそう言うのは真っ平御免だった。
結局全部オレのわがまま。末っ子のオレは隼人くんに比べて結構可愛がられてきた方だから親にも隼人くんにもなまえちゃんにも大抵のわがままは聞いてもらえたけど、これは聞いてもらえないわがままだ。一番いいのはオレのことを好きになってもらうことだけど、たぶん無理だよなぁ。なまえちゃん、ずっと隼人くんのこと好きだし。

オレ、どうすればいいんだろう。なまえちゃんに健康でいて欲しくて、できれば近くで見ていたいだけなのに。



140813

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