2.
彼と再会したのは自動販売機のラインナップからコーンポタージュがなくなった頃。
わかりやすく言えば、私と彼の学年が一つ上がった頃だった。
今度はお互い制服姿で、上靴を履いている。
友人二人と廊下の自販機前で頭を悩ませる少年は私に気づいていないらしい。
ここで私は少年の上靴の色から、彼が二年生になったのだと言うことを知った。後輩だったらしい。
悩んでいる内容はアクエリにするかポカリにするかという帰宅部代表私からすればすごくどうでもいいことで、なんならこの間のお礼に奢ってあげようと声をかけようにも名前がわからずにただ待っているだけとなっていた。
少年の両サイドにいる男の子たち、上靴の色から彼らもまた二年生だということがわかるのだが、この二人がポカリかアクエリかで割れているらしい。
私から向かって左の坊主の男の子がアクエリ、右の…これまた驚くほどに背の高い男の子はポカリ派のようだ。
だからお姉さんが両方買ってあげるってば。悩んでいる暇があるなら先に私に買わせておくれ。
その思いがどうやら通じたらしい。坊主の男の子が私に気づき、少年の服を引いた。
背の高い子と少年も同じように振り向いて、口を「あ」の形にする。
「ユキ、先にこの先輩に譲ろう」「ユキちゃんがポカリ買わないから待ってたんだね」という友人二人の話を聞いているのかいないのか、見下げる少年と見上げる私。
ここで私たちは改めて再会を果たしたわけである。
少年にコーンポタージュをもらったことで少年の勇気を少し分けてもらったのか、それとも二度目で相手が私に気づいているらしかったからか、私の体は自然に動いていた。
500円玉を投入し、お釣りが落ちる前にボタンを三つ押す私の手さばきを見たか後輩たち。
ガコンガコンと音を立てて落ちてきたペットボトルのうち二本を少年に託し、私は液体だけなら同じような色のくせにパッケージは真逆の薄桃色のもも風味天然水だけを持ちその場を去った。その間彼らは無言で、ただただ私と少年を見守っていた。
私が7mほどその場を離れたところで、背の高い男の子がわっと声を上げたが、ずんずん離れて行った私に会話内容を知るすべはない。これで少しは恩返しできただろうか。
あの日の傷はとっくに癒えているつもりだが、時々彼の姿を見かけると胸が苦しくなる。
女々しいなあ。パッケージは桃色なのに中身は透けた白色の液体を流し込むと、ほんのり桃の味がした。恋はこんなに甘くない。






140201






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