取り入れた遅い情報が、頭の中を反芻する。
「あの机、蹴ったの上原じゃん。」
「…君、ね。」
「はぁいー?」
「一回、病院で眼を検査してもらった方が良いと思うの。
あ、頭の方かな。」
にっこりと笑みを浮かべて。
本当は、鞄を握った手に冷や汗が滲むのを感じて。
あたしは動揺していた。
見られたはずが無いと思っていたのに。
「じゃあね、宮下クン。」
逃げるように教室を出たのはあたし。
15歳の自分なんて、さほど大した事なんてしてない。
小さなことに世界の終わりを感じて、小さなことに世界の至福を感じた。
馬鹿みたいに小さな世界のことなのだと気付いたのは、彼に会ってからだった。
- 3 -
[*前] | [次#]
ページ: