困惑


「えっ?!え!どうしたんですか名前さん!!」
何やら灰原が騒いでいる。
その懐かしい様子に、ぎゅうっと腕の力を強めた。
「え?えぇ…本当に何があったんですか…?」
灰原は困惑しているようで、きっと今困ったように笑ってる、と名前は推測する。

「七海、驚いてないで助けてよ」
灰原は隣の七海に助けを求める。
七海、驚いていたのか。冷静沈着な彼が驚愕する所なんて、そうそう見れるものじゃない。
「いえ、名字さんの奇行っぷりに」
七海は眉間に皺を寄せそう言うと、顔を洗いにさっさと鏡へ向かう。
まるで面倒事はごめんだ、というように。

「名前さん?」
灰原が努めて優しく言う。
ゆっくり顔を上げると、やはり困ったように笑う彼と目が合った。
「どうしたんですか?」
小さい子に問いかけるように話す灰原に、だんだんと視界がぼやけるのを感じた。





「おっ前、何してんだよ」
ビリッと灰原から剥がされる。
五条が名前の首根っこを掴んで、灰原から引き離したのだ。

そういえば、五条も居たな。忘れてたけど。
灰原の登場に、灰原しか見えていなかった名前は五条の存在を忘れていた。

「後輩にちょっかい出すのやめろ」
「いやあんたに言われたくない」
「あぁ?!」
いや、本当に五条にだけは言われたくない。
知らないと思うけど、大人になった今でも七海や伊地知にちょっかい出してるの知ってるし。
いやー、この前の七海への絡み方はさすがにどうかと思ったね。いい大人が“ちんこ“って………ないわ。

「あの、僕は平気です!」
灰原が空気を読んで仲裁しようとしている。
あぁ、本当にいい子。





「朝から楽しそうだね」

洗面台の入口に背を向けて五条と怒鳴りあっていた私は彼の登場に気が付かなかった。
彼の心地のいい低音に、体が固まるのを感じた。








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