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「正直君の事は好きじゃない」
「は?」
「…ぷっ」

職場体験、名前は爆豪と共にNo.4ヒーロー、ジーニストの元にいた。
邂逅1番、ジーニストから”嫌い”と言われた(言ってない)爆豪の拍子抜けした声に、名前は思わず笑いが漏れてしまった。
だが、いつもなら「なに笑っとんだテメー!」とキレてくる爆豪が微動だにしないため、名前は爆豪が意外にも冷静な性格であることを思い出した。

「ウチを選んだのもどうせ、五本の指に入る超人気ヒーローだからだろ?」

名前はジーニストにチラリと視線を向けられ、心の中で思いっきり顔を顰めさせた。ジーニストの目が、まるで”君もだろ?”と語りかけているようで気分が悪かった。

名前がここを選んだのは弔くんに言われたからなのに、なんなのよ!!

「指名入れたのあんただろうが…」
「…まったくよ」

名前が内心イライラしていれば、その気持ちを代弁するかのように爆豪が呟いた。
ジーニストは、爆豪のように凶暴な人間を”矯正”するのが自分のヒーロー活動だと言うと、前髪をきっちりひと撫でした。

「ヴィランもヒーローも表裏一体…そのギラついた目に見せてやるよ。何がヒーローたらしめるのか。それで次は君、確かヒーローネームは…マリーゴールドだったか?」
「はい!爆豪くんと同じ1年A組の名字名前です!」

ジーニストは爆豪から視線を名前に移すと、名前がギリギリでミッドナイトに提出したヒーローネームを口にした。
爆豪は、名前のヒーローネームが決定した事を知らなかったのか、驚いたように名前を見た。

「あ、ヒーローネーム決まったの。お先にごめんねっ!」
「うっせぇ!何も言ってねぇだろうが!!」
「もー、うるっさいなぁ。それでジーニスト、私はなんで指名されたんですか?まさか爆豪くんと同じように”凶暴”なんて言わないですよね?」

そう、驚いたことにジーニストは名前を指名した。





300もの指名を獲得した名前は、誰のヒーロー事務所に行けばよいのか迷いあぐねていた。
ヒーローに1ミリも興味がない名前は、緑谷と麗日に見てもらいながら明日に迫った職場体験先を決めていた。
そんな時、突如緑谷が興奮しながら叫んだ。

「えっ!?名字さん!!!すごいよ!ジーニストから指名がきてる!!」
「ジーニストぉ?」
「えぇ?!デクくんそれほんま?!?すごいやん名前ちゃん!!!」

名前は瞬間、緑谷と麗日がなぜこんなにも喜んでいるのか分からなかったが、緑谷が「No.4ヒーローのジーニストが指名するなんて…!」と言ったことで、ヒーローランキング上位のヒーローだからかぁと納得した。
結局、そんなヒーローの元へ行って万が一何かやらかしたら問題なため、名前はそこら辺のヒーローの指名を受けることにした。
だが家に帰りアジトに寄った際、名前は死柄木から、「爆豪勝己と同じ職場体験先にしろ」と言われたのだ。
名前は、よりにもよって爆豪と同じなんて最っ悪…と悪態をついたが、結局個性を使用して爆豪の職場体験先を把握すると、彼と同じ”ジーニスト事務所”と書いて提出した。





「私が君を指名したのは………単なる興味だ」
「は?」

名前がジーニストの元にくる経緯を思い出していれば、もう一度髪をひと撫でした彼が名前を見つめて言った。
単なる興味ってどういうことよ、と名前が思案していれば、「体育祭での君を見て、君の内にあるものを知りたいと感じたよ」とジーニストが言った。

「…はぁ」
「君の個性はとても素晴らしいし、君も個性の使い方を十分に理解している。だが違うんだ。何かが君には足りないんだよ」
「……はぁ、何かが?」
「私にはそれは分からない。だから知りたいと思ったんだ」

ジーニストはまた髪をひと撫ですると、名前をじっと見つめた。
何もかも見透かしてしまうような瞳だった。

「職場体験と言っても私は容赦しない。2人ともしっかり着いてくるように」
「…はい、がんばりますっ!」
「…」

ヒーロー…だっる!!!
名前がこんなんで本気出す訳なんてないのに。

名前はそんな事を考えながら、笑顔で拳を握ってみせた。爆豪はそんな名前に一瞬目をやるが、すぐにギラついた瞳でジーニストを見た。

ただ名前は、”ヴィランもヒーローも表裏一体”というジーニストの言葉がどこか引っかかっていた。





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