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「何ごとだぁ!!?」
「えぇ、外に出られない…!」

放課後、帰宅しようと教室のドアを開けた名前達を他クラスの生徒が道を塞いでいた。

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろザコ」
「なんで?」

爆豪の言葉に名前が思わず繰り返すと、「ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭前に見ときてぇんだろ」と、爆豪は冷静に分析していた。
そして真っ直ぐ前を見据えると、「意味ねェからどけ、モブ共」と、堂々と言い放った。

「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「ああ!?」
「やだっ!私達爆豪くんと一緒にされてるよ!!」

名前が思わず麗日に呟けば、「何だとテメェ!!」と、爆豪が振り向いて威嚇してきた。
うわ顔怖っ!と、名前が内心思っていると、目の下の隈が特徴的な紫色の髪をした男子が、「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」と呟いた。

「普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ、知ってた?」
「そうなんだぁ、私知らなかったかも!」
「っ、名前ちゃん…!」

名前にとってはそんな事どうでもいい事だったので特に気にした様子もなく呟けば、少し焦った顔をした麗日に咎められた。

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ…。敵情視察?少なくとも俺は、調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー、宣戦布告しに来たつもり」
「えー!逆も然りって、普通科に落とされるってこと?雄英って意外と厳しいんだ!」
「あわわ、名前ちゃんっ!!」
「…あんた」

名前はヒーローになるのも、ヒーローを目指して必死に努力するという考え方も理解できなかったため、普通科に通っている中ヒーローに憧れを持つ心操に対して重い一言を放った事が分からなかった。
心操は苛立った様に声のした方を見たが、そこにいたのが名前だと分かると、驚いたように目を丸くした。

「隣のB組のもんだけどよぅ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!エラく調子づいちゃってんなオイ!!」

そんな空気を壊したのは、大勢の人の波を割って入ってきたB組の鉄哲で、その場の全員の視線が爆豪に集まった。
爆豪は無言で教室を出て行こうとしたが、「待てコラどうしてくれんだ!」という切島の言葉に立ち止まり、そしてなんでもなさそうに、「関係ねぇよ…。上にあがりゃ関係ねぇ」と、言って教室を出ていった。



「爆豪くんさすがって感じ!ブレないねー!!」
「いや私は名前ちゃんにもヒヤヒヤしたよ」
「え、なんで?」
「あの空気の中入っていけるのはさすがに…さすがに………」
「えー?私はリザルトとか知らなかったなぁって思っただけなんだけどなぁ」

爆豪の一言で徐々に生徒がはけていき、名前達もやっと教室の外に出ることができた。
下駄箱で靴を履き替えていれば、ホッとしたような表情をした麗日が名前に言った。

「皆本気で取り組んでるって事だよね…」
「緑谷くん?」
「僕頑張るよ!名字さんも一緒に頑張ろうね!」
「…そうだね!」

名前は正直、体育祭はダルいし、全国のヒーローが集まってくるのもテレビで中継されるのも死ぬ程嫌だったが、覚悟を決めて取り組むしかないのかなぁ…と、笑顔を浮かべて頷いた。

そんな名前達の会話を、下駄箱に寄りかかった心操が1人聞いていた。




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