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名前は轟にニコリと微笑みかけると、尾白の氷を溶かずに核へ近づいた。
そしてまたパイロキネシスで火を発生させると、冷たい声で轟に言った。

「今すぐ彼の氷をどうにかしてっ!さもなくば、この核爆発させちゃうかもぉ」
「あ?」
「… 名字、さん」

名前の言葉に轟が低い声を出す。
轟は、名前が火を発生させた事で少し苛立っていた。名前は知る由もないが、自分にとって1秒たりとも見ていたくない炎を見せられ、轟もまた冷静でいられなくなっていた。

「いいの?言う通りにしないと本気でやるよー?それか私が大通りに飛んで、そこで爆発させてもいいかもね!」

『あっ!名前飯田みたいにヴィランになりきってるー!』
『これ轟どうするんだろうな!?』

この時の名前は完全にヴィランの名前だったが、訓練であり核がハリボテである事を知っているクラスメイト達はそんな事を予想もせず、モニタールームで大いに盛り上がっていた。

「お前の要求には応じねぇ…」

そう呟くと共に、轟は名前に氷結を仕掛ける。
名前はテレポーテーションで轟の目の前に移動すると、そのまま彼に向かって右の回し蹴りを決めた。

『うわー!名字やったぞ!?』
『イケメンにも一切躊躇なし?!』
『… 名前ちゃん』

轟はよろけながらもすぐに名前から距離を取り、隙を見て核を氷結で固めようとする。
名前は物体引き寄せで核を手元に引き寄せると、次の瞬間には下の階に転送した。

「は?お前…核をどこやった」
「さぁ?」

こちらを鋭く睨みつける轟を横目に、名前は尾白の氷を溶かす。
そして、「名字さん…」とこちらを見つめる尾白に、『核はこの下の階に送ったの。後はお願い!』と、テレパシーを送った。
尾白はいきなり頭の中に流れて来た名前の言葉にギョッとしたが、名前がコクリと頷いたのを見て、「…分かった」と言い、部屋を出ていった。

「っオイ!」
「貴方の相手は私!」

尾白に向けて氷結を出そうとした轟に火をぶつければ、つり上がった目がさらに鋭く光る。

「達成状況には、ヴィランの確保も入ってるからな。お前を捕まえる」

轟はそう言って、名前に向けて先程よりも強い氷結を出した。名前は能力を使って逃げながら轟に近づこうと奮闘し、轟もまた、自身の間合いに入られるのを拒むかのように氷結で塞いだ。
これはもう、どちらかの体力が切れるまでの戦いだった。



…クッソ野郎、制限時間はまだなの?!

どうやら先に限界が来たのは名前で、吐きそうになる体で出力を上げた攻撃を避けようと轟の後ろへテレポーテーションした。

「この時を待ってたんだ」
「は?…っなに」

轟は自身の背中に氷結を出現させており、すぐ様名前の体を氷で覆った。そして、先程火を発生させた手も一緒に固めると、「お前の負けだ」と、名前に言った。

「名前が負けるわけないじゃん」
「拘束した、あとはお前を捕まえるだ、け………」

瞬間、轟に向かって小型ナイフが飛んできた。
名前はウエストポーチからナイフを取り出し、気づかれないように空中浮揚でその辺に浮かせていた。
そして拘束された瞬間、サイコキネシスで轟に向けてナイフを動かした。

『っ名字少女!』

モニタールームでオールマイトの焦ったような声が聞こえるが、名前の耳には届かない。
そして………、

「っ、ヒーローチームWIN!!!」
「は?」
「あー残念!負けちゃったぁ」

ピタッと、轟の目と鼻の先でナイフが止まった。
轟が驚いて名前を見れば、名前はなんでもないような顔をして、「障子くんが核回収したのかな?それより轟くん、これどうにかして欲しいんだけど…」と言った。
先程のヴィランになりきっていた名前からは想像もつかない穏やかな様子に、轟は目を丸くすると同時に、無言で名前を覆う氷を炎で溶かした。



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