[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

06. 希望 (1/5)

何も知らぬ時のおまえは、夢に満ちていた
共に永遠を過ごし、そして孕む願い

許されざる行為に、解りながら手を出す自分

ただ、この腕の中におまえが居ればどうでも良かった


"愛"など、所詮後付けだ

愛されたいと希望に溢れる人形だが、結局は己の慰めの為にしか存在しない









第6話【希望】
〜deepregret〜







「おかえりなさい!」


いつもと変わらぬ、弾む声。
辛さを知らぬような、冴やかな笑み。

柱から顔を覗かせ、愛くるしい仕草を見せるロゼ。

こればかりは自分が躾けた訳ではないが、習慣と言っていいほど彼女がそれを怠った日は無い。



ロゼを購入して、早一年と少し。
すっかりと、ここの環境に慣れてきた。

"ただいま"の言葉の変わりに、セフィロスはロゼの頭に手を置く。
それを待ち望んでいたかのように、ロゼは彼の手を両手で掴み、自分の頬に添える。

ほんの少し、暖か味のあるセフィロスの掌が、彼女の"好き"のひとつだった。





*****





「っ、ロゼ……」


弾ける水音と共に、ロゼの名を呼ぶセフィロスの声。

己が名付けた"ロゼ"と言う名の"呪縛"。
見えない縄で縛り付け、自分だけに反応するよう感性を深く植えつける。


「んっ……セフィ、くすぐったい……」


背後から抱き締められ、アップにした髪から覗くうなじを軽く舌で弄るセフィロス。
擽ったさに駆られ逃げようとしても、セフィロスの抱き締める力が強く、ロゼは歯痒い思いをする。

広いバスタブに浸かり、裸身を寄せ合うふたり。


ロゼをこの手で"女"に変えてから、セフィロスは必要以上に彼女を求める。
それこそ拓いた当初は、嫌悪を抱いていたロゼだったが、慣れて来る度更に"女"と化す。

セフィロスは湯中から、ロゼの左胸に手を掛ける。


「……稔りの施しは差し当たり未だか」


せせら笑う声を残し、指先だけでロゼの身体を弄ぶ。

水面に揺れながら映る自分。
ロゼは、同じ顔を歪める己を見つめ心中で語り掛ける。
また、同じく語り掛けられる。



――――ねえ……あなたは、愛されている?




熱い湯に長々と浸かり、感情を煽られれば、容易に眩暈を催すだろう。
逆上せた身体を、セフィロスに抱き上げられる。

火照りを効かせた身体にネグリジェを纏わされ、水が滴る黄金色の髪をドライヤーで乾かす。
一本一本大切にするよう、柔らかく触れながら……



セフィロスは以前に比べ、相変わらず口数は少ないものの、ロゼに対する接し方が穏和になった。
それは、彼女がただ飾られるだけの"人形"ではなく、慈しみ慰め処となる"人形"に移り変わったからか?

だが、ロゼにとって用途は何でもよかった。

日々セフィロスに愛され、そして必要とされる……
ただそれだけが、己の願望であり幸でもあるから。

卑俗な言葉を浴びせられ、時には卑劣な行為を強いられる。
身体は拒んでいても、ロゼの心中はいつもセフィロスを想い、そして忠実に従う。

"穢れ"を知らぬ小さな心は、策略の為に仕込まれた調教ですら変わることがなかった。
ただ、彼女の本心が彼を敬い、愛を求める。

無駄な言葉を押し殺して……



「セフィ……ロゼの髪、のびた?」


サラサラと流れるロゼの髪。
それを掬い上げ、セフィロスは背後からロゼの頬に口付ける。


「ああ。伸びたな……綺麗だ」


"綺麗"……ここ最近、彼の口癖のようにロゼに語る。
自分が綺麗かどうか解りもしないが、セフィロスが自分を褒めているかと思うと心底嬉しく感じる。

いつものことながら、ロゼは口元を緩めた。


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