[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

09. 愛執 (1/5)

この汚れた手は、全てを破壊した
悪魔の乗り移ったカラダ

それでも抹殺することの出来ぬこの想いは、やがて自身の心をも破壊する

正当化されぬ罪の償いは、"死"よりも重い


愛執を残す想いを、人形が変わりに慰みを齎す









第9話【愛執】
〜substitution〜







モニターの電子音だけが、一定に響く。
ロゼの、か細い腕から伸びる太いチューブ。

先程まで苦しそうに歪んでいた表情は、落ち着いたのか少し穏やかになっていた。

セフィロスは病室の入口横でパイプ椅子に腕を組みながら座り、今も静かに眠るロゼを黙って見つめていた。



医者は何故ロゼが倒れたのか、理由がわからないと言う。
彼女が珍しい異国の人間であるのならば、恐らくその国特有の病気ではないかと。
病名がわからなければ、もちろん治療法も無い。

今回だけで済めば良いが、何せ病的と言っていいほど白く細い身体のロゼに少々不安を抱く。



落ち着かない面持ちを表情に出さず、セフィロスは顔を俯ける。
その時、外から激しい足音がふたり分聞こえた。


「セフィロスっ!ロゼはどうした?」


連絡を受け慌てて飛んできたのか、ザックスとアオイが息を切らして豪快に病室の扉を開けた。
背後で静かにと注意を促す看護師に頭を下げている。


「……今は落ち着いて眠っている」


彼らとは逆に、冷静さを保っているセフィロスが静かに答えた。
その答えに安心したのか、ザックスとアオイは肩の力を下ろしロゼの許へと向かう。

ふたりがロゼの顔を覗くと、騒がしさの為か、ロゼがゆっくりと瞳を開いた。


「ロゼ!……大丈夫?」


アオイが動揺を隠せない口調で声を掛ける。
未だに意識がぼんやりとするロゼは、ふたりの顔を交互に見ながら答えた。


「……アオイちゃん?……ザックス?」


大きく頷くふたりを視界に、ロゼは表情を少しずつ緩ませた。


「セフィ……は?」

「ここに居るわよ。ほら、セフィロス!」


アオイがロゼの耳元で答え、足元に座るセフィロスを指差す。
少しだけ頭を起こしセフィロスの姿を捉えると、彼に手を伸ばし嬉しそうに微笑む。


「……セフィ」


だがセフィロスはロゼに駆け寄ろうともせず、冷静な視線で彼女を見ると直ぐに顔を俯けた。


「……おい、セフィロス。ロゼが呼んで」

「いいの」


ふたりの間の違和感を不審に思い、ザックスがセフィロスの傍に寄ろうとした。
しかし、ロゼが止めるかのように、素早く彼の裾を掴んだ。

ザックスは思わず振り返る。
ロゼは彼を見つめ寂しそうに微笑むと、小さく首を二回振った。
それでもセフィロスは動じない。

ザックスとアオイは、異常なまでの冷たい空気に不安を覚えた。


[ Back ]

×
- ナノ -