[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

Another. 月の記憶 (8/11)

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「……醜い」


自分で事を起こしたとは言え、目の前に広がるモンスターや人間の死体から異臭が放たれる。
酷く慣れてはいるが、その醜態に思わず言葉が吐き出た。

立て続けに厄介な事が続き、朝っぱらから村人や多数のモンスターが襲い掛かれば、肉体的にも精神的にも疲れを感じる。
どうせ殺すのならいっその事、村を焼き払ってしまえば良いと思う時もある。



「っ、セフィロス!」


背後からひとり分の駆け寄る音と、聞き慣れた声で自分が呼ばれたことに気付く。
振り返らずに、ただ一点を変わらず見入っていた。


「おっと、こっちは片付いたのか。それにしても、随分とまた派手に散らかしたなぁ……」


溜息とも似た息を吐き出しながら、ザックスは困ったかのように頭を掻きむしった。

ここまで犠牲を出さなくても済んだ筈、と思いつつも言葉を無理矢理自身の中へ詰める。
それが、"彼のやり方"なのだ。


「全く……こんなにも時間を掛けて暴動など、面倒なことを」


反神羅を掲げた、村人たち。
かの有名な英雄に敵わぬと知っていながらも、暴動を挑む気迫の凄まじさ。
全ては自分たちの住む村を守る為に。

それを、その一言で片付けてしまうとは……

ザックスは唇を一本線に強く結ぶと、一言も発せずに両手を合わせライフストリームに還る魂たちに祈った。
戦場でよく見る彼の行動を何も思いもしないのか、セフィロスは目に入れぬまま基地へと足を向け出す。
続くように、ザックスが後を追った。


「おい、セフィロス!」

「騒々しい。何だ?」


煩わしく飛ぶ蝿を追い払うかのように、左手を振るセフィロスにザックスが突っ掛かった。


「……オレたちは、何で戦うんだ?」


当たり前のような言葉に、セフィロスは思わず足を止めた。
ゆっくりとザックスの顔を見る。


「っ、……オレたちは、餓えたモンスターじゃないだろ?」


強い視線から逃げるように、ザックスは顔を素早く背け、地面を見つめながら深い思いを口にした。


「…………」

「…………」


太陽がもう直ぐ陰る。
夕陽が眩しいほどに照らされていた。
だが、まるで渦を巻くように闇に囲われる感覚……

口を開かぬセフィロスは、ただ強い気迫だけを放っていた。



「俺は……ソルジャーだ」


闇を裂くような一言。
少し間を置き、ザックスに背を見せると眩しい太陽を見つめる。


「ソルジャーは戦っていれば良い……少なくとも、俺はな」


小さな沈黙が流れ始めた時、背後から物凄い轟音が聞こえてきた。


「あっちはまだ終わってないみたいだな……」


応戦に向かうザックスは、"後で。"と答え先を急いだ。
そんな彼を横目で見ていたセフィロスも歩き始める。



――――紅く染まったこの手を、誰が救ってくれると言うのか?



「今日も月は……紅い、か」


心なしか、昨夜よりも大きく見える紅月。

"何"を意味するかも知らずに……


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