[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

Another. 月の記憶 (7/11)

*****



事を終え、小さな寝息を立てるロゼ。
傷すら無い白い肌を、シーツの中に隠して。

彼女の横で、セフィロスは静かに煙草をふかしていた。

窓の外には、相変わらずの紅い月。
その眩しさが自分らを照らす。

そっとロゼに視線を映した。

飾りひとつないロゼは、正にロゼそのものだった。
彼女を失ったことを諦めていた自分も居れば、心底どこかで求めていた自分も居たのだろう。


――――神の好意か、それとも悪戯か……?


どちらにせよ、この手の中に彼女は居る。
それが例え偽りでも、真実であっても。

引き裂かれた旋律が、再び揺れ始めて……



「ロゼ……」


彼女を覆うように、セフィロスはロゼの金色の髪に口付ける。
起こすつもりはなかったが、擽ったさにロゼは軽く瞳を開けた。


「セフィ……?」


甘えるように、彼の首に腕を絡める。
微かな互いの温もり。
それは、いつまで経っても満たされることなく求められる。

額と額を合わせた、その時だった。

単純な音が、テーブルの上から鳴り響く。
セフィロスの携帯。
メールだろう、それを煩わしく手に取ると、大きな溜息を落とす。


「すまない、緊急任務だ。ここから一歩も出るなよ」


宥めるように片腕でベッドの上の彼女を柔らかく抱くと、素早く服を纏う。
軽く頷いたロゼは黙ってセフィロスを見つめていた。

支度を整えたセフィロスは、最後にロゼの頭を軽く撫でながら外に向かう。



「早く、帰って来て……」


祈るような、切ない声。
あまり気にはしなかったが、それを受け止め扉を閉めた。



「……時間が……ない、の……」


一瞬にして暗くなるロゼの表情。
もちろん、その声が彼に届いてはいなかった。





*****





未だ朝陽も昇らない夜明け前。
紅い月が薄っすらと消えていく。


ふとセフィロスは見上げ、基地の外から自分の使用する部屋を見た。
窓から張り付くように、ロゼが見ている。
立ち止まり、口元を緩ませた表情を見せると、ロゼも同じく微笑んでいた。

安堵感を覚えたセフィロス。

そんな自分が可笑しいように、一度視線を背けると自らを嘲笑する。
再びゆっくりと窓を見ると、そこにはもうロゼの姿はなかった。

中に引っ込んだのだろうか。
そう思いながら、止めていた足を進める。


漸く、眩しい朝陽が顔を出した……


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