[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

13. 鼓動 (2/5)

「……貸せ!」


更に顔を歪ませ泣きじゃくるアオイから、セフィロスは強引にロゼの身体を奪った。


「ロゼ……ロゼ?起きるんだ……起きろっ!!」


セフィロスは何度もロゼの身体を激しく揺らし、呼び掛けた。

だが、何の反応も示さない。
更に強く、彼女を揺らす。



「セフィロス……もう瞳孔が開いてる。助からない……」


見るに見かねたザックスが、セフィロスの肩にそっと手を置く。
彼の言葉に、セフィロスは酷く顔を歪ませた。

すると、思いもよらない行動を始めた。

静かな海岸に、渇く音が何度も繰り返される……



「やめてっ!!お願い、セフィロス!やめてぇーっ!!」


アオイの叫ぶ声。

セフィロスは凄まじい形相で、ロゼの頬を強く何度も引っ叩き出した。
無論、それでも反応を示すことはない。
痛がることも、泣き出すこともせず、ただ無表情のまま顔を左右に動かされていた。

アオイは、泣きながらセフィロスを止めようと彼の腕を強く引っ張る。
しかし邪魔をするなと言うように、セフィロスの強い力によって弾き飛ばされた。


「アオイっ!!」


ザックスは、彼女に慌てて駆け寄った。
身体を何とか起こしたアオイは、彼を止めて。と瞳でザックスに強く訴える。


「おい、もう止めろ!!」


未だロゼを叩き続けるセフィロスに、ザックスは彼の肩を強く掴み止めた。
それでも手を止めず、遂には彼の頬を殴った。

漸く納まった哀しい音。

そして、誰もが感じる言いようのない悲しみ……


セフィロスの口角から垂れ落ちる血。
痛みすら感じないが、それを手で拭いながらザックスを鋭く睨む。


「……ロゼ、痛がってんだろ」


ザックスは呼吸を乱しながら、目を閉じた。

その言葉に、セフィロスはロゼの顔に目を向ける。
先程まで青褪めていた顔色が、両頬だけ赤く腫れあがっていた。





――――ローサは、何故死んだ?


俺が……俺が、愛したからだ。


だから……

だから、ロゼを愛せなかった。


もう、失いたくなかったから……








セフィロスは、ロゼを抱きながら立ち上がった。
そして、二人に背を向けて歩き出す。


「っ、セフィロス!ロゼを……どうするの……?」


アオイの声に、セフィロスは立ち止まる。


「……家に帰るだけだ。こいつの……家に」


そう静かに言い残すと、ロゼを連れ車へと向かった。
顔を両手で覆いながら泣き続けるアオイを、ザックスは優しく抱き締める。

彼らは、黙って見送った。


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