宿られた魂
脈打つ心は、大きな音を残して崩れ落ちる
この手で守りたいもの
この心を満たしたいもの
この身体を慰めてくれるもの
全てに置いて、大切だと感ずるもの
愛されることを懸命に願った人形の鼓動は、こんなにも美しかった
最終話【鼓動】
〜cherished Doll〜
あなたの傍に居られれば、それだけで良かった。
あなたがあたしではなく、他の誰かを想っていても……
傍に、居たかった。
慰めでもいいから、抱きしめて欲しかった。
でも……
あなたが幸せなら、それで構わない……
車のスピードが、みるみると加速していく。
一刻も早く、ロゼに会いたい。
会って、強く抱きしめたい。
恐らく、ロゼは許してくれるだろう。
彼女はそういう女だ。
自意識が強過ぎるだろうか……
だが数々の想い出を辿ると、ロゼも、そして自分も互いを必要としている。
ロゼは、いつも笑顔で迎え入れていた。
きっと、これからもずっと……
だから、直ぐにでも迎えに行かなくてはならない。
もう、二度と迷わずに……
焦る気持ちを胸に、セフィロスは先を急いだ。
*****
閑散とした海辺。
真冬の海は人など居る筈もなく、波の音だけが響いている。
ロゼが行きたがっていた海とは少し場所が離れているが、彼女はそこへ行きたいが為にここへ迷い込んだのか?
朝陽が光を射す浜辺を、早足でセフィロスは降りていった。
海岸の岩が並ぶ畔で、複数の人影が見える。
恐らく、ザックスたちだろう。
更に足を速めて、その場へ向かった。
大きな樹木。
揺らめくカラダ。
しなやかに……美しく……
ローサは、何故死んだ?
俺を裏切って……
「……セフィロス」
自分たちの姿を、立ち尽くし茫然と眺める彼に気付いたザックス。
だがザックスの呼びかけに反応することもなく、セフィロスの視線は、浜辺に膝を付け、ロゼを抱きしめながら嗚咽を漏らすアオイに落とされていた。
アオイに抱かれるロゼは、何も感じないように無表情のまま、まるで静かに眠っているようだった。
「っ、セフィ……ロス……」
アオイはセフィロスの存在に気が付き、赤く腫れさせた顔を上げた。
伝わる、哀しい感情……
「……ロゼがっ……ロゼ、が……し、んじゃ……っ……」
――――ロゼが、死んだ…………