[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

11. 裏切 (2/6)

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ザックスに背中を押されながら、アオイの病室へ入る。

モニターの電子音が響く中、アオイは訪問者に気がついたのか、そっと瞳を開く。
ザックスとロゼを視界に入れると、ゆっくりと微笑んだ。

怖気づいたのか、ロゼは後退しザックスの背に隠れる。
暫し、ザックスと会話していたアオイだったが、やがて彼女に向けて顔を覗かせる。
ザックスも、彼女の背を押してアオイの前に誘導した。


「ロゼ……身体の具合は大丈夫?」


自身の具合の方が優先なのに、先に自分を心配してくれるアオイの温かさを感じる。
瞳を潤ませながら、震える唇を開いた。


「アオイちゃん……ごめっ……ごめんね……」


溢れそうになる涙を堪えながら、ロゼは悲痛の想いを零した。
自分のせいでアオイに負担をかけ、胸の奥から滲み出る痛みが全身に痺れる。

そんなロゼを心配させまいと、アオイは常に微笑む。








「ザックス」


幾日か入院するアオイを病院に残し、家まで帰宅する最中、ザックスの手を握り歩くロゼが小さく呼び掛けた。
少し腰を屈め、彼女に応える。


「あたし……入院する」


足を止め、静かに宣言するロゼ。

まさか、先程のセフィロスとの会話を聞かれていたのか?
焦りで心臓が高鳴る。


「ロゼ……無理しなくていいんだぞ?アオイも直ぐに退院でき」

「もう、決めたの!」


真っ直ぐな薔薇色の瞳で見つめられる。
意思の固い瞳。

彼女の、強さ……



「ロゼ……」

「あたしの病気……きっと、治るよね?」


今にも泣き出しそうな歪んだ表情に、懸命に引き攣る笑みを浮かべる。

病気と言う概念に怖れを抱いているのか。
震わせる身体が、繋がる手から伝わってくる。


「……ああ」


完全な答えなどわからないが、ザックスはロゼを安心させる為に大きく頷いた。
一瞬目を逸らしたロゼだったが、また直ぐに視線を合わせると嬉しそうに笑う。

そして、二人は帰路へと向かい歩き始めた。


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