[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

10. 隠忍 (6/6)

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重い瞼をゆっくりと開ける。

ロゼは、差し込む眩しい朝日に目を痛めた。

少しばかり身体が楽になった。
痛みを伴う上半身を、ゆっくり起こした。

ふと視線を下ろすと、アオイが自分の右手を握り、ベッドに頭を乗せて眠っている。
自分が苦しんでいる最中、ずっと傍に居てくれたことを嬉しく思った。

口元を緩め、アオイの耳元に近づく。


「アオイちゃん、起きて。風邪引いちゃうよ?」


余程疲れているのか、彼女はビクともしない。
ロゼは小さく笑いながら、繋がっている右手を揺らす。

その瞬間。
力なく、アオイの手がロゼの手から滑り落ちた。

スローモーションのように、床に落ちていくアオイの身体。
激しい音が響いたが、彼女は動かなかった。



「ア、オイ……ちゃ……?」


凄まじい胸騒ぎ。
恐る恐るベッドから降り、アオイの許に寄る。

血の気が引いたように、真青に染まる彼女の顔。
ゆっくりと身体を揺さぶる。


「っ、や……だ、いや……っ……いやあぁぁ!!」


頭を両手で押さえ、目の前に落とされた衝撃に吃驚する。
甚だしいロゼの叫声が、辺り一面に響く。



これ以上、大切な者を失ってしまったら……あたしは独り。





――――忍びない、無慈悲な哀愁
歯痒い想いは、決して報われることなく

寡黙の哀しみは朽ちていく……






To Be Continued

2006-12-03


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