[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

08. 悪夢 (2/7)

*****



「ロゼ……それはね、"大人"になった証なのよ」



――――神羅カンパニー・医務室


密かに、セフィロスはロゼをアオイの許へと連れて来た。

椅子に座り、アオイの話を真剣に聞くロゼ。
離れた壁に、セフィロスは腕組みをして寄り掛かる。


「あたし、大人になれたの?」


声を喜ばせ、ロゼは瞳を輝かせる。
これまで"大人"になることに人一倍敏感だった故、喜びも一際大きい。

手を合わせ喜ぶロゼは、振り返りセフィロスへと向く。
だが、彼は直ぐに視線を外すと目を閉じた。


「だから、お腹の痛みは将来赤ちゃんが出来る為の準備だと思って耐えてね」

「赤ちゃん?!……あたしにも、赤ちゃんが出来るの?」


何と言う教養の足りなさ。
見た目もすっかり大人に近付いているのに、あまつ剰え低能な知識。
アオイは呆れるほど、セフィロスの養い方に溜息を落とした。


「あたしも、アオイちゃんと同じになれる?」


俯き考えるアオイの顔を覗くように、ロゼは声を弾ませた。
一瞬眉を顰めたが、アオイは口元を緩めると大きく頷く。


現在、アオイは妊娠していた。

その一報を聞いた時、ロゼは心から喜び、そして羨ましくも思った。
大好きな人の子を身篭り、そして共に喜びを分かち合える。

四年も前からザックスとアオイを見ていたロゼにとって、彼らはセフィロスと同じくかけがえのない大切な人達だった。



「……もういいだろう、帰るぞ」


それまで黙って聞いていたセフィロスは、早足でロゼの許へと向かうと彼女の腕を引く。


「ちょっと、セフィロス!」


ロゼの腕を引き、その場を去ろうとした彼にアオイが呼び止めた。
煩わしそうに振り返るセフィロス。

アオイは彼を睨みつけると、重い口を開いた。


「解っていると思うけど……"避妊"はしっかりしなさいね」


厳しい口調に、セフィロスは冷たい視線を送る。
しかし、アオイも負けじと続ける。


「もう二度と、ローサの二の舞には」

「うるさい!」


張り詰めたセフィロスの怒鳴り声。

ロゼは驚き、びくりと身体を震えさせる。
セフィロスは苦虫を噛み潰したように、ロゼを強く引き部屋を出た。

激しく扉が閉まる音に、アオイは大きな溜息を残した。


「どうか、ロゼに同じ思いをさせないで……」


神に縋るように、アオイは小さく言葉を残した。





*****





「ねえ、セフィ」


帰り道の車内にて、黙って運転するセフィロスに声を掛ける。
返事はなかったが、ロゼは話を続けた。


「"ヒニン"って、なあに?」


アオイの言葉に違和感を感じたのか、ロゼは不思議そうに問う。
セフィロスは一瞬ロゼに視線を向けたが、直ぐに戻すとやっとのこと口を開く。


「……おまえは知らなくて良いことだ」


怒りを交えたような口調に、ロゼは眉を顰めながら痛む腹を擦った。


[ Back ]

×
- ナノ -