追いつかない呼吸と声は、軽い悲鳴のようにも聞こえる。
もう、どれだけ達したのだろう。
窓から覗く光は、陽を射していた。
灰皿の中には、すっかり燃えきった灰しか残っていない。
「んっ、あ……セフィ、ん、あ……っ!」
自分の上で激しく動くセフィロスを、ロゼは薄らと開いた瞳に捉えた。
どことなく悲しげで、尚悲痛な思いを打ち切るように壊れるほど自分を抱く。
それが、哀しみの逃げ道と言うように日常化とされていた。
慰めるつもりではなかったが、ロゼは思わず彼の頬に手を伸ばす。
それに気がついたセフィロスは、微笑しながら彼女の手に自分の手を重ねると、圧し掛かる様にロゼに覆い被さり強く抱き締める。
ドクン、とナカで彼の熱い鼓動を感じる。
「っ……ローサ……」
ロゼは瞳を大きく開き驚愕した。
止まったような時間。
だが直ぐに笑顔を浮かべると、セフィロスの大きな背中に腕を回す。
「うん……セフィロス……」
"ロゼ"としてではなく、初めて聞く彼の言う女性になりきった。
耳元で聞こえるセフィロスの吐息が、穏やかになったのを感じる。
セフィロスを小さな腕で抱き締めるロゼの瞳から、一粒の熱い水滴が零れ落ちた。
*****
異様な疲れを残しながら、セフィロスは眩しさに目を開いた。
腕の中には、いつもと変わらぬロゼの姿。
だが、珍しいことに自分を凝視していた。
「……どうした?」
セフィロスの呼び掛けに、身体をびくりと反応させる。
彼女が先に目覚めるなど有り得ない。
毎夜、ロゼが失神する迄抱き、翌朝になっても目覚めないことが殆ど。
少し目周りを赤くしながら不安そうに見つめる瞳。
眠っていないのか……
セフィロスは、彼女の額に自分の額をつけた。
「ロゼ、具合悪くなるぞ……まだ寝てろ」
するとロゼは、急に表情を明るくし、セフィロスの胸に顔を埋める。
彼女のする意味が全く解らない。
僅かな溜息を落としながら、セフィロスはロゼを強く抱き締めた。
随分と心地良い夢を見た。
嘗て、ローサが生きていた頃の夢を。
身体を重ね、その全てが愛おしいと思っていた。
だが、それも所詮過去。
夢など、幻想の迷い。
――――双方が重なり合う
……もう、二度と戻れない
今こそ、長年抱いていた"復讐"の時……
To Be Continued
2006-11-12