[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

07. 追憶 (3/4)

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ロゼの四回目の誕生会も終え、彼女と別れ惜しくもザックスとアオイは自宅へと帰り、静まり返る室内。
シャワーを浴びるロゼの水音だけが仄かに聞こえてくる。

ベッドルームでくつろぎながら、セフィロスは煙草を口に咥え、例の写真を片手に見入っていた。


「……おまえは一体、どこまで俺を苦しめれば気が済むんだ?」


口元は緩みながらも、絶望を映すような暗い瞳。
その瞳は、既に死んでいると言ってもいい。





  大きな樹木。

  揺らめくカラダ。

  しなやかに……美しく……




"裏切り"

……裏切った?

どっちが……?

……自分?





――――裏切り者っ!セフィロスは、あたしを裏切ったのよ!!




「っ……裏切り者は、おまえの方だ。ローサ……俺を残して逝きやがって……」


顔を酷く歪ませ、額に手を当てる。
握り締める写真に力が入り、握り潰すように折れ曲がっていく。
身体の中から熱く溢れ出そうな"何か"を必死で堪えた。



写真の中で笑う、一人の女。

話し掛けても、もう二度と答えない。
笑わない……

自分と同じ、銀色の髪。
同じ瞳の色。


たった一人の……





写真の中で笑う彼女に冷たい視線を送り、セフィロスはライターの火先をそれに当てた。

みるみる火が広がり、消えていく彼女の形。
捨てるように灰皿へ落とし、燃えゆく残骸を見つめていた。


ふと、暗いベッドルームに人影を感じた。

顔を上げると、小さな炎に照らされたロゼの姿。
いつからそこにいたのだろう。
黙って燃えゆく"それ"を瞳に映している。


「……ロゼ?」

「セフィ……燃えちゃうよ?大事な想い出」


ロゼの寂しげな瞳に、自分が映る。
何もかも、見透かしたような美しい薔薇色の瞳。
彼女は何を察し、何を思っているのだろう。


「来い……」


傍に誘い、素直に寄るロゼの身体を抱き上げた。
咥えていた煙草を、写真の上に押し付ける。
不思議そうにセフィロスの膝の上でそれを見ていたロゼだったが、テーブルの上に添えてあった薔薇の花を彼に手渡して貰うと次第に微笑む。

毎年の如く、彼からの誕生日プレゼント。
年の数だけの、薔薇の花。

自分と同じ名前の……


今年は四本。
"人形"はすっかりと成長したと、セフィロスも心中思う。



ロゼを抱いたまま立ち上がると、セフィロスはベッドへと向かう。
彼女をベッドの上に優しく降ろし、添う様に覆い被さる。

片手で包み込んでしまうロゼの頬を向かいに寄せた。


手の甲をロゼの口元へ差し出すと、教わった通りに口付け、指の間に舌を滑り込ませる。
色っぽい仕草。
男を惑わす、妖艶な美しさ。

全てを兼ね揃え、全霊をかけ仕込んだ。
"人形"を、自分の理想と術く。


俺の為に、俺だけに足を開く"人形"…… ――――

それは、所詮"彼女"の代わりにしかならない。


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