ゴソゴソと毛布に潜り込み、セフィロスに身体を寄せ甘えるロゼ。
「……どうした?」
それが自ら"教えた"習慣だと解っていても、彼女に問う。
ガラス玉のようなロゼの瞳が、セフィロスを真っ直ぐ映す。
何も語らぬ唇が、やがてゆっくりと開いた。
「セフィ……愛してる!」
突然の告白に、セフィロスは吸った煙が気管に入り咳き込む。
同時に彼の意外な反応に、ロゼも驚いた。
「突然……何を言い出すんだ?」
最後に咳払いをすると、セフィロスは困り果てた表情でロゼを見つめた。
ロゼは身体を起こし、セフィロスの膝に跨り差し向かう。
「あのね、アオイちゃんが教えてくれたの。"魔法の言葉"」
「"魔法の言葉"……?」
また仕様もないことを吹き込んで、とセフィロスは頭を痛めた。
だが、ロゼは構いなしに話を続ける。
「大好きな人に"愛してる"って言うと、自分がもっと相手を好きになるんだって。
だから、アオイちゃんはザックスと結婚できたって言ってた」
頭が縛り付けられたように痛い。
こういった事は、大の苦手だと解っていてロゼに吹き込むアオイに腹立つ。
"愛"など、自分の中でこの世には存在しない。
況してや、"裏切り"の重さに勝てる筈等無い。
「……くだらないことを覚えてくるんじゃない」
溜息と共に吐き出した。
そしてロゼの額、鼻先、唇に自分の唇を付けると、彼女の首元に顔を埋めた。
「ん、ねぇ……セフィ?」
擽ったい感触の最中、ロゼは甘ったるい声でセフィロスを呼んだ。
見上げれば顔を赤くさせ、瞳を潤ませるロゼの感じる姿。
「何だ?」
セフィロスは顔を上げ、ロゼの瞳に口付けた。
いつものように笑いながら、ロゼは話し出す。
「あのね……ロゼ、セフィと"けっこん"したい」
鬱陶しいほど、嫌悪する言葉。
女の憧憬の夢だか知らないが、所詮虚像と空想の浅ましさ。
そんな慰めの為にロゼを購った訳ではない。
だが、子供の戯言と思えば気にもならない。
態々身体を侵す前に無価値な笑談で縺れるなど、面倒極まりなかった。
言い返すのも煩わしく、無言で微笑を浮かべた。
それを肯定の意味と取ったロゼは、瞳を潤わせ両手を口に添え喜悦する。
夢と希望が詰まっているようなロゼの身体を破壊するように、セフィロスは彼女を後ろに押し倒した。
コドモの夢など、オトナになれば忘れてしまうもの。
恐らくロゼも……
――――愛に溺れる、醜き魂
貪るように、自分を傷付け破壊する
時を越え、再び我に舞い落ちる"絶望"……
To Be Continued
2006-11-05