[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

06. 希望 (2/5)

*****



「……そうか、それはおめでとう」


リビングのソファーに腰掛け、携帯を片手に話すセフィロス。
"ロゼの指定席"に座り、静かに本を読んでいたロゼは、受話器から漏れる声に鋭く感付き、彼の元へ駆け寄る。

代わって、と言うように、両手を差し出すロゼをセフィロスはあっさり無視した。
それでも諦められないロゼは、ソファーに乗り甘えるように彼の膝の上に転がった。
いい加減それが煩わしくなったのか、セフィロスは渋々電話をロゼに渡す。


「もしもーし、もしもーし!」


覚えたての言葉で、電話口の相手に話し掛ける。
嬉しそうに、セフィロスの膝の上で笑いながら。


「もしもーし、ザックス!ロゼだよ」


"ロゼ、元気か?"と言う声が受話器から漏れるのを、セフィロスは眉間に皺を寄せて聞いていた。


「げんき。ザックスに会いたい!」


ロゼも負けじと大きな声で返す。

ここのところ、全くと言っていいほどザックスは疎か、アオイにも会っていない。
相変わらずセフィロスは多忙を極め自宅に居ない日も多いが、ロゼが生活に慣れたこともあり、終始この家に居るのが当たり前となった。


「……ロゼ、いい加減にし」

「あっ、アオイちゃん!」


注意を促そうとしたセフィロスだったが、敢無くアオイの出現によって歓喜を挙げるロゼの声に阻まれる。
話の内容からして大した事ではないが、セフィロス以外滅多に人と話すことのないロゼにとって、ザックスやアオイと話せる事は何よりも嬉しかった。

いつまでも終わらない会話を、セフィロスは無理矢理ロゼから携帯を奪う事で終結した。


「あっ、でんわー!」

「また連絡する。その時にでも」


セフィロスは淡々と電話口に告げると、電源を切った。
手を伸ばし、飛び跳ねながら電話を求めるロゼ。

直ぐに鋭い視線を送ると、ロゼは下唇を噛み絞め俯いた。


「……近い内に会える。今日は我慢しろ」


溜息と共に、セフィロスは重く吐いた。
その言葉を聞いたロゼは、瞬時に表情を明るくする。


「ほんと?ほんと?」


セフィロスの腕を両手で掴み、瞳を光らせる。
正直、セフィロスはそれが嫌だった。

ザックスはともかく、最近ではアオイと接触させる事すら嫌がる。
ロゼは、すっかり"家"と言う名の"檻"に閉じ込められている。

しかし外に出るのを望むことも訴えることもなく、ロゼは何一つ言わず日々過ごしていた。



「ねえ、ザックス何て言ったの?」


ベッドルームに向かう最中、ロゼはザックスとの電話の内容を聞いてきた。
面倒な故セフィロスは顔を顰めたが、毛布に入り込むと煙草に火を点けたと同時に答える。


「アオイと結婚するそうだ」

「けっこん?!」


毛布に頭から潜り込んで来たロゼは、嬉しそうに顔を覗かせ声を挙げた。

セフィロスのバスローブを裾を両手で引くロゼの瞳は、憧れと喜びでキラキラと輝いていた。
それを見たセフィロスは、眉を顰め鬱陶しいと言うように含んだ煙を一気に吐き出す。
そういった事に憧れを抱く年齢だろうロゼが、必要以上に尋問される事を予測していた。

案の定、煩わしいほど訊ねてくる。
それに対して、セフィロスは曖昧に答えた。

言葉を覚えたとなると、余計なことを喋られるのが何とも厭わしい。
人との会話を楽しむロゼだからこそ余計に思う。



「ぅ……んっ、セフィ……?」


何か言うより手っ取り早く、忙しなく動くロゼ唇を自分の唇で塞いだ。

長い間呼吸を止めでもしていれば、後には忘れてくれるだろう。
ロゼに、極めて苦い唾液を口内に押し流す。
嫌だと言えない代わりに、顔を歪ませ目を強く瞑る。

教えた通りに舌を絡ませ、腕を首に回してくる。
少しずつ熱を帯びていくロゼの身体。

何も語らず、ロゼの身ぐるみを剥がした。


[ Back ]

×
- ナノ -