[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

05. 呪縛 (3/5)

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「お邪魔しまーす!」



翌日、クリスマスイヴの早朝。


セフィロス宅の玄関が、派手に開く音と大きな声がした。

リビングの床に座り込んでいたロゼは、その声に反応し立ち上がると玄関に向かって走っていった。
同じくリビングのソファーに座りテレビを見ていたセフィロスは、軽く後ろを振り返るが直ぐにテレビの画面に目を戻した。

いつも聞き慣れている声とロゼの笑い声が重なり、リビングが騒々しくなった。


「おう、セフィロス。メリークリスマスイブ!」


ニカッと歯を見せながら笑うザックスに、片手で抱き上げられているロゼは楽しそうに笑っている。
後ろからアオイも顔を出した。


「あら、どうしたの?このおっきなツリー……」


ザックスとアオイは、リビング入口横に大きなクリスマスツリーがあることに驚いた。
セフィロスの家に、こんなものが置いてなんて正直信じられない。

いや、以前は……



「ふふっ。あのね、きのうセフィが買ってくれたの」


ザックスの腕の中で、ロゼは嬉しそうに答えた。
それを聞いたセフィロスは、何故か気まずいように顔を背けている。

ツリーは下の方だけ装飾がされ、床に幾つもの飾りが転がっていることから、ロゼがひとりで懸命に飾り付けをしていたと思われる。


「そっか!よかったなぁ、ロゼ」


ザックスは喜ぶロゼの額に、自分の額をコツンとつけて共に笑う。
ふたりの姿を見ていたセフィロスは、ほんの少し目を細め、彼らを一見すると立ち上がりベッドルームへと向かった。


「さて、早速パーティーの準備でも始めますか。キッチン借りるね」


アオイは持ち込んできたたくさんの紙袋を両手に提げ、馴染むキッチンへ向かって行った。


「ねえ、ザックス。手伝ってくれる?」


ロゼは相当ザックスとアオイが気に入っているのだろう。
況してや、セフィロスと違い自分が笑むことにより、同等のものを返してくれる。
アオイも、親身になって接してくれる。

ロゼにとって、二人はセフィロスと同じく家族のように思っていた。
ザックスとアオイも、自分たちに可愛らしく懐くロゼを妹のように思っている。


「よし!夜までに、このツリーをキレイにするぞ」


妹、と言うよりも、まるで子供のように扱う。
何よりもロゼにとって、今が一番幸せな時なのだろう。

リビングでツリーの飾り付けをするロゼとザックス。
暫くするとベッドルームの扉が開き、フォーマルを装うセフィロスが出てきた。



「……ああ、セフィロス。頼んでいた品、届いたから玄関に置いてある」


先程まで笑顔を絶やさなかったザックスが、一瞬で表情を曇らせると静かにセフィロスに告げた。
アオイもそれに気付き、エプロン姿のままキッチンから出てきた。


「もう、行くの?」


同じく、アオイも表情暗くセフィロスに問う。
冷たい空気が流れる三人を、ロゼは何も解らず黙って見ていた。


「ああ。ロゼを、頼む」


沈黙を破るようにセフィロスは答えると、玄関へと向かった。
すかさず、ロゼは彼の後を追う。

ロゼの目に入ったのは、丁度扉の外に出るセフィロスの後ろ姿と、左手に持つたくさんの薔薇の花束。


バタン、と扉が閉まった。


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