[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

04. 傷跡 (2/4)

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「わーい!」


目の前に広がる大きな海に興奮し、ロゼは両手を上げながら走っていく。


「っ、ロゼ」


セフィロスはロゼを止めようと彼女の腕を掴もうとしたが、するりと簡単に抜けられてしまった。
片手で顔を覆い、露骨に嫌な表情を見せる。


「はいはい、私が看てますから」


アオイは鋭く察知すると、ロゼが落とした帽子を拾い、彼女の後を追った。
残されたセフィロスとザックスは、互いに口を閉ざしながら砂浜を降りていく。


「……なあ、悪かったって」


ザックスは重い口を開き、素直に詫びた。

どちらが悪いと言う訳でもないが、このままの関係で過ごしたくはない。
謝罪の言葉を言うことで全てが納まるのなら、と思ったからだ。

セフィロスは、それを聞くと微笑する。


「解れば良い」

「おまっ!……まあ、いいけどさ」


セフィロスが自分が悪かったなどと言うと、考えただけでも少々身の毛がよだつ。
彼なりの謝罪か、とザックスは心中笑った。





夏と言っても既に秋に近く、海中にはクラゲが多い為、足を浸かる程度に楽しむ。
浅瀬でアオイの手を取り、スカートを捲し上げ声を挙げるロゼ。

セフィロスはその姿を、終始見届けていた。
ほんの少しの笑みを浮かべて。

その様子を、ザックスは隣で声を出さず一驚した。


あのセフィロスが、"人形"だと言い張るロゼに対し、柔らかな視線を送る。
それを、当の本人は気付いているのだろうか?


彼の視線に気が付いたのか、ロゼが笑顔で手を振ってきた。
一度目を閉じ、口元を緩めるセフィロス。


――――何故か、懐かしい気がする。

これは昔の……?


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