[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

03. 背徳 (3/4)

――――1階ロビー


神羅社員の人だかりで、ロビーは殆ど埋め尽くされていた。


「ねえ!あの髪、何色って言うの?」

「ちっちゃーい!!」

「うっわ、人形みたい……」


口々に思い勝手な事を言いながら、その人物を囲んでいた。
その人物とは、紛れも無くロゼであった。

たくさんの人だかりに囲まれ、何を言っているか解らない彼らをもの珍しそうに見回した。
やがて、ひとりふたり……とロゼに手が伸びる。


「お名前、何て言うの?」

「誰かに用事かな?」


差し出される手が怖く、ロゼは避けるように逃げる。
走り出すが、直ぐに他の社員とぶつかった。


「……こんな綺麗な女とヤリてーよな」

「ばーか。まだ子供だぜ?」


ぶつかった男社員の言っている意味は解らないが、何故か震えるような感覚が芽生える。
その時、中央エレベーターが着く音がした。

エレベーターから降りたセフィロスとザックスは人混みの中、ロゼを視界に捉えた。
ある程度予測はしていたが、まさか本当にロゼが神羅ビルまで来るとは思ってもみなかった。

ロゼへ向かい駆け込もうとしたセフィロスに、一人の社員の叫び声が耳に入る。


「あの子……"人形市場"で売られていた子だ!」


瞬間、その場にいた全員の動きが止まる。
ロゼもその声に反応し振り向くと、その近くでセフィロスの姿を見つけた。
それに安心したのか、顔を緩ませるとセフィロス目掛けて走っていく。

同時に、その場に居た皆は彼女の姿を目で追う。


自分を求め、走り寄って来るロゼ。

だが、セフィロスは彼女を素早く払い除けた。
その衝動で、ロゼは床に腰をつく。


しん、と静まり返るロビー。

何が起こったのか解らない、とロゼは茫然とセフィロスを見上げる。
冷たい、セフィロスの眼差しが心に強く突き刺さった。



「……おい、セフィロ」


ザックスがセフィロスの肩に手を置こうとしたが、それをするりと抜けその場を立ち去るセフィロス。
丁度その時、騒ぎを聞きつけ走ってきたアオイがロゼに駆け寄り、彼女の身体を抱き締める。


「ごめんなさい!この子、私の親戚の子なの……」


周りにそう告げると、優しくロゼの手を引き医務室へと向かった。
ザックスとすれ違う際、目で合図をして。

ロゼが居なくなったと同時に、集まっていた人だかりが解散するように散らばっていく。


「なあ今の子、絶対セフィロスと関係ありそうだよな」

「あー、その噂なら聞いたことある!
……あれだろ?前に若い女を人形のように弄んで壊したとか」

「壊した?……殺したとか?」

「さあ。そこまでは知らないけど、結構卑劣な事してたらしい」


ザックスの前を通りかかった数名の職員が、口々に言いながら彼の前を通る。
瞬間凄まじい気力に気付いた職員らが、それがザックスの放つ圧力だと認識すると、そそくさと立ち去っていった。


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