「じゃあな。しっかりロゼの面倒看ろよ」
玄関先でふたりを見送るセフィロス。
ザックスの忠告のような言葉に、少々煩わしそうにしながらも謙虚に受け入れる事とした。
結局、ふたりはセフィロスに積極的に協力するようにした。
それはロゼを思うだけではなく、長い付き合いである彼をも思って。
セフィロスの家を出たふたりは、自宅までの道を静かに並んで歩く。
「……なあ、似てないか?」
ザックスは、突然アオイに問い掛ける。
「……そうかしら」
暫くの沈黙の後、アオイは余所余所しそうに首を傾げながらザックスに否定する。
「容姿が似ているとかじゃないんだ。何て言うか、その……」
――――"存在感"。
ふたりを見送ったセフィロスが寝室に戻ると、遊び疲れたのかベッドの上で静かに寝息を立てるロゼ。
眠る彼女の横に腰掛け、ロゼの淡いピンク色の頬に手を触れる。
伝う人肌に目を覚ましたのか、ロゼはセフィロスの手に自分の手を被せると恥かしそうに微笑んだ。
そんなロゼを抱き上げて膝の上に乗せ、先程のザックスと同じように座らせるセフィロス。
未だ眠い目を擦りながら、まじまじと彼の顔を覗き込む。
幼さの残る、あどけない表情。
汚れを知らぬ心。
自分が何者かも解らぬ男に、買われてしまった哀れな"人形"。
ロゼの髪を後ろに掻き揚げながら、セフィロスは重い心持で彼女を見入る。
「……セ、フィ……セフィ……?」
紅く艶やかなロゼの唇が、初めて言葉を発した。
先程の自分たちの会話で覚えたのであろうか?
それも、自分の名を……
瞳を強く閉じるセフィロス。
優しく微笑み、自分の名を呼ぶ。
変わらない……いつまでも変わらない声、仕草……
衝動に駆られるように、セフィロスはロゼを強く抱き寄せた。
彼女を抱き締める力が、序々に増していく。
だが、ロゼは嬉しそうにセフィロスの首に腕を絡ませていた。
ロゼの柔らかい笑い声が、耳に残る。
"アレ"の存在は、未だ嘗て消えることはない……
――――枯れた花が、返り咲く
再び、動き出した時が過去へと舞い戻すように
それは、しめやかに全てを蝕んでゆく……
To Be Continued
2006-10-08