[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

01. 転生 (3/4)

*****



店を出ると、ぱらぱらと振り落ちる白い粉雪。
それに気付き、セフィロスは空を見上げた。

灰色の空から、ゆっくりと舞い落ちる雪。



――――三年前も、こんな雪の夜だった。





  大きな樹木。

  揺らめくカラダ。

  しなやかに……美しく……


  "裏切り"

  ……裏切った?

  どっちが……?

  ……自分?






「くっ……」


脳髄が侵されていく。
痛みだす頭痛を抑えるように、セフィロスは片手で自分の顔を覆った。

少し酔ったのだろうか?
酔いを醒ます為に、暫く街を歩こうと決めた。





さすがに今夜はクリスマスイヴともあって、街中はカップルやプレゼントを片手に急ぐ人々で賑わっていた。
たくさんのカラーを灯したネオンが、煌びやかに光る。
道行く人々は、幸せそうにすれ違っていく。





――――ねぇ、セフィロス。今年のクリスマスイヴは仕事休める?



多忙。
当たり前の日々。

その中でも、当たり前のような存在。


自分も嘗てはそうだったのだろうか。
"幸せ"など、感じたことはない。

だが……



コートのポケットに両手を突っ込み、白い息を吐き出しながらゆっくりと道を進んでいく。
ふと、横に視線を向けたときであった。
賑やかなこの通りとは異なり、暗く澱んだ空間のような狭い通路。

セフィロスは、何故かそこに引き込まれるように足を向けた。





人の気配が全くない通路。

こんな道の先に何があると言うのだろう……

そう思いながらも、心とは別に足が進む。
やがて一軒の小さな店が見えた。

店先のショーウィンドウ。
通り過ぎる筈だった店に、ちらっと視線を向けたその瞬間、セフィロスは思わず立ち止まった。


薄明るいライトに照らされた、一体の"人形"。

金糸のような、長いストレートの金髪。
雪のように白く、透き通るような肌。
ほんのり染まった、桃色の頬。
紅い、艶やかな唇。

そして……薔薇色の瞳。


まるで、本物の人間みたいだ……



セフィロスは、ショーウィンドウに近づき両手を付けて"人形"を見つめた。
静かに座る"人形"の瞳が、自分の瞳を捉えた。
よく見ると、ゆらゆらと揺れ動く"人形"の瞳――――


そう。
"人形"ではなく、人間……

だが、それの足元には"[Doll] for sale"のプレートが。





「……それ、気に入ったかい?」


店のドアが開き、店主らしき男が出てきた。
ニヤニヤと厭らしく笑い、煙草を口に銜えている。


「綺麗な人形だろ。ここらでは滅多に手に入らない代物だ」


吸った煙を吐き出しながら店主は言った。


「人形?……どう見たって人間だろう」


セフィロスは、軽く睨みながら店主に問う。
だが、店主は彼の問いに可笑しそうに声を挙げて笑った。


「兄ちゃん、あんた馬鹿か?本当に知らないわけじゃないんだろ」


蔑むように答える店主。
その態度に、セフィロスは無言の怒りを示した。
だが、店主は慌てることもなく話を続ける。


「まあまあ。外で話すのも何だから、中に入ってよく見てみなよ」


セフィロスの背後に回り、馴れ馴れしく彼の背中を押しながら店主は店内に案内した。


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