[Dolls] -rose- | ナノ

【Dolls】-rose-

01. 転生 (1/4)

星を巡る、ライフストリーム

ヒトは死を迎え入れ、やがてはライフストリームへと還る
そして、再び転生する





古びた店に陳列された、小さな一体の人形

彼は人形の美しさに、一目見て心奪われた

茫然と座る人形の膝元には、一輪の深紅の[薔薇]

彼は人形に、ロゼと名付けた


人形は、ただ彼に愛されたかっただけ









【Dolls】-rose-










  揺らめくカラダ。

  しなやかに……美しく……

  忘れられぬ過去。

  裏切りの証。


  追憶の日々……









第1話【転生】
〜reincarnation〜







静かなショットバー。

薄暗い空間の中、カウンター席に並んで座る二人の男。
互いに無言のまま、ただ刻々と時間だけが過ぎていく。

カラン、とグラスの氷が崩れた。
この場にはあまり相応しくない格好の男が、それを合図とするように口を開く。


「……もう、三年も経つんだよな」


この世界では、あまりにも有名な"神羅カンパニー社"の兵士・ソルジャーの装いをする男。
座る椅子から落ちそうなぐらいの伸びをしながら遠くを見つめる。

一方、隣に並ぶ黒のネクタイを締めるスーツ姿の男。
ソルジャーの男の言葉に、少し苦みを見せた表情を浮かべながら無言で手持ちのグラスを口に運ぶ。

再び訪れる沈黙……



「なぁ……まだ忘れられないのか?」


ソルジャーの男は、顔を向け、はっきりと問い掛ける。


「……愚問だな」


鼻で笑い、視線を向けずに答えるスーツ姿の男。
それが納得できないのか、ソルジャーの男は身体を乗り出した。


「でも、今日も行って来たんだろ?アイツの」

「……ザックス」


ザックスと呼ばれたソルジャーの男が、声を荒げ始めた瞬間に制止された。
興奮しかけたザックスは、それに軽く溜息を零すと身体を戻し自分のグラスを手にする。


「……オレはな、セフィロス。ただ、あんたのことが心配なだけだ」


様子を窺うように、セフィロスと呼ぶ男を見ながら告げるザックス。
だが、全く表情を変えないセフィロス。
グラスを少し荒っぽくテーブルに置くと、セフィロスは漸くザックスに視線を移す。


「余計な世話だ。おまえ如きに杞憂されるようなことは何一つない」


いかにも彼らしい言葉に、ザックスは苦笑いを浮かべた。
そして手持ちのグラスを口に運び、一気に喉へ流し込むと勢い良く立ち上がる。


「それもそうだな。
じゃあ、オレは帰る。あんまり飲み過ぎるなよ」


手を上げ、その場を立ち去るザックス。
極めて明るく努める彼に、セフィロスは思わず微笑した。


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