いつからだろうか。自分の周りの色が消えて無くなっていったのは。中学生の頃はあんなに鮮やかだった世界が、高校、大学、社会人と進につれて灰色に変わっていった。それは決して俺の目が悪くなったのではなく、他人の温かさという絵の具が無くなってしまったのだ。

「はぁ」

1日に何度吐くかわからない溜め息は、幸せどころか自身の命まで吐き出しているような気がする。

「何でじゃろ」

理由がわからない。何故こんなにも色が無くなっていくのだろうか。俺は大事な何かを忘れている気がする。けれどそれが思い出せない。遠い昔の記憶を探れば、俺を抱き締める温かな両腕と優しい声で名前を呼んでくれる誰かが、とても悲しそうな瞳で俺を見る。

「誰?」

――…仁…王……く…

「呼ばんで。俺を呼ばんでよ。触れられないなら、優しくせんで」

優しい光となった誰かに名前を呼ばれると、とても温かい気持ちになれた。でもそれはただの記憶。実在しない優しさに溺れてしまう前に急いで背を向けて歩き出す。

――プツンッ

どこかで糸が切れたような音がした。その瞬間全ての思いや記憶が頭の中を駆け巡る。

「あぁ…。そうか」

全てを悟った俺は自嘲めいた笑みを浮かべて、おとなしく瞳を閉じた。

「柳生さん……」

一瞬だけ開いた瞳には、見知った数々の顔と真っ白な天井が写しだされ一瞬で消えていった。


-END-

魑魅魍魎様に提出
暗い話しをメインとか言っておきながら、わけのわからない話しばかりの私が本領発揮しちゃいました。

暗いのは書くのも読むのも好きなのにな………

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以下解説。
話しの内容がいまいちわからないという方はどうぞ。












仁王は事故か何かにあって、意識不明の重体。仁王が話していた現状は、全て夢のような物。最後の最後で記憶の中にある優しい人物=柳生のことを思い出すも、時既に遅し。一瞬だけ目覚めたものの、そのまま……

仁王にとっての楽園=現実
夢に捕らわれた時点=事故にあった瞬間に、楽園は滅んだということです。


解説すらわかりにくいのは、どうしたらいいのでしょうか。


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