「なんやねん……」
乱暴に屋上の扉を閉めると、無造作にコンクリートへと座り込む。勢いが良すぎて尻を強打するも、今のイライラに比べたら微々たるものだ。
「ほんま意味わからん」
朝。いつもの通り朝練をするために部室へ向かうと、部長とユウジ先輩がドアの前で話し込んでいた。挨拶をして中へ入ろうとすると部長に“今部室ん中にスズメバチ居んねん。せやから朝練は無しや”と言われて、俺だけ追い返された。ユウジ先輩は何故かその場に居続けていたのに。
「しかも…」
玄関で会った金太郎には、顔を見るなり全力で逃げ出された。機嫌が悪いときも金太郎は近付いて来ないけど、今日は別に悪くなかった。多少イラついてはいたが、それはテニスが出来なかったから。
「極めつけは……」
謙也さんの意味不明な行動。昼ご飯は先輩らと食べると決まって(と言うか決めて)いるから、借りた漫画を返すついでに謙也さんを誘ったら“すすすまん財前!!ちょっとスピーディーちゃんの世話しに、家行ってくるわ!!”と、挙動不審に全力で告げられた。
「ほんまなんやねん。俺なんかしたやろか……」
確かに普段から悪態ばかり言って可愛くない後輩だが、それでも先輩らは良いと言ってくれていた。けど、流石に嫌になったのだろうか。
「はぁ…。グダグダ考えとってもしゃーない。とりあえず部室行こ」
重い腰を引きずり上げて、渋々部室へと向かいだした。
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「――ぎ――やろ」
「ん?」
とっくに部活が始まっている時間なのに、コートに誰も居ないことを不思議に思い部室の扉を開けようとすると、中から先輩らの話し声が聞こえてきた。
「ほんまアホやろ!!」
「アホ言うなやボケ!!」
「誰がボケじゃナス!!」
「ナスちゃうわこのオクラ!!」
どうやら謙也さんとユウジ先輩が言い争ってるみたいだ。珍しい組み合わせだと思い、しばらく聞き耳をたてることにする。
「謙也も金太郎もわざとらしいんじゃアホ!!あれじゃ、光に感づかれるわ!!」
「し、しゃーないやろ!!俺隠し事出来ひんやもん!!」
「ワイも無理やぁ!!」
「そんなことより、光どうすんねん?絶対傷つけやろ」
「「うっ……。すまん」」
感づかれる?一体なんのことだろうか。
「そう言うんは本人に言った方がええんとちゃう?」
部長の声がした直後、寄りかかっていたドアが内側から開かれ顔面を強かに打ち付ける。
「――ったあ!!」
「あ!!すまん!!」
「「「光!!」」」
「ほんまなんや…ね…ん……」
鼻を押さえながら顔を上げると、部室の壁には“光クンお誕生日おめでとう!!”と書かれた垂れ幕がかかっていた。
「なんや中途半端なドッキリになってしもうたが、光、誕生日おめでとうさん」
「「「「おめでとう!!」」」
パーンとクラッカーを鳴らされて、無理やり三角の帽子を被せられる。
「すまん光!!」
「光、ごめんなぁ」
何とも情けない表情で謝ってきた二人を見て、今までのイライラが一気に吹っ飛ぶ。
「ま、しゃーないっすわ」
この先輩らと金太郎が他人を故意に傷つける事なんて、あるわけがないのだ。
「てか、すっかり忘れとりましたわ」
「おま、自分の誕生日やん!!」
「興味ないんで」
「薄っ!!反応薄っ!!」
何時もより三倍増しの騒がしさに、たまには混ざってみるのも良いかと思えた。
-END-
H100720様に提出。
notBLって結構難しい。
そして光じゃないんですけど!!誰この子!!誰ぇぇえ!?
こ、これでも光のことす、好き何だからねっ!!←
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