「なんやねん……」

乱暴に屋上の扉を閉めると、無造作にコンクリートへと座り込む。勢いが良すぎて尻を強打するも、今のイライラに比べたら微々たるものだ。

「ほんま意味わからん」

朝。いつもの通り朝練をするために部室へ向かうと、部長とユウジ先輩がドアの前で話し込んでいた。挨拶をして中へ入ろうとすると部長に“今部室ん中にスズメバチ居んねん。せやから朝練は無しや”と言われて、俺だけ追い返された。ユウジ先輩は何故かその場に居続けていたのに。

「しかも…」

玄関で会った金太郎には、顔を見るなり全力で逃げ出された。機嫌が悪いときも金太郎は近付いて来ないけど、今日は別に悪くなかった。多少イラついてはいたが、それはテニスが出来なかったから。

「極めつけは……」

謙也さんの意味不明な行動。昼ご飯は先輩らと食べると決まって(と言うか決めて)いるから、借りた漫画を返すついでに謙也さんを誘ったら“すすすまん財前!!ちょっとスピーディーちゃんの世話しに、家行ってくるわ!!”と、挙動不審に全力で告げられた。

「ほんまなんやねん。俺なんかしたやろか……」

確かに普段から悪態ばかり言って可愛くない後輩だが、それでも先輩らは良いと言ってくれていた。けど、流石に嫌になったのだろうか。

「はぁ…。グダグダ考えとってもしゃーない。とりあえず部室行こ」

重い腰を引きずり上げて、渋々部室へと向かいだした。



*****************



「――ぎ――やろ」

「ん?」

とっくに部活が始まっている時間なのに、コートに誰も居ないことを不思議に思い部室の扉を開けようとすると、中から先輩らの話し声が聞こえてきた。

「ほんまアホやろ!!」

「アホ言うなやボケ!!」

「誰がボケじゃナス!!」

「ナスちゃうわこのオクラ!!」

どうやら謙也さんとユウジ先輩が言い争ってるみたいだ。珍しい組み合わせだと思い、しばらく聞き耳をたてることにする。

「謙也も金太郎もわざとらしいんじゃアホ!!あれじゃ、光に感づかれるわ!!」

「し、しゃーないやろ!!俺隠し事出来ひんやもん!!」

「ワイも無理やぁ!!」

「そんなことより、光どうすんねん?絶対傷つけやろ」

「「うっ……。すまん」」

感づかれる?一体なんのことだろうか。

「そう言うんは本人に言った方がええんとちゃう?」
部長の声がした直後、寄りかかっていたドアが内側から開かれ顔面を強かに打ち付ける。

「――ったあ!!」

「あ!!すまん!!」

「「「光!!」」」

「ほんまなんや…ね…ん……」

鼻を押さえながら顔を上げると、部室の壁には“光クンお誕生日おめでとう!!”と書かれた垂れ幕がかかっていた。

「なんや中途半端なドッキリになってしもうたが、光、誕生日おめでとうさん」

「「「「おめでとう!!」」」

パーンとクラッカーを鳴らされて、無理やり三角の帽子を被せられる。

「すまん光!!」

「光、ごめんなぁ」

何とも情けない表情で謝ってきた二人を見て、今までのイライラが一気に吹っ飛ぶ。

「ま、しゃーないっすわ」

この先輩らと金太郎が他人を故意に傷つける事なんて、あるわけがないのだ。

「てか、すっかり忘れとりましたわ」

「おま、自分の誕生日やん!!」

「興味ないんで」

「薄っ!!反応薄っ!!」

何時もより三倍増しの騒がしさに、たまには混ざってみるのも良いかと思えた。



-END-


H100720様に提出。

notBLって結構難しい。
そして光じゃないんですけど!!誰この子!!誰ぇぇえ!?

こ、これでも光のことす、好き何だからねっ!!←


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