サラサラと風に靡く亜麻色の髪が好き。その優しい手つきや穏やかな声、笑うとくっきりと浮かび上がるえくぼも好き。あげだしたらきりがないくらい、柳生のことが好きだ。
「好きなんに……」
好き。その気持ちは誰にも負けない自信があった。それでも男だというだけで、柳生にその気持ちを伝える事が出来ずに終わってしまった。
「柳生さん顔がとろけとるよ」
「に、仁王くん!?」
「彼女か?可愛いのぉ」
遠くに見えた亜麻色の髪へと声をかけると、並んで歩いていた小さくて清楚な女の子がふわりと微笑んで挨拶をする。
「まったくノロケよって。幸村に怒られんようにせぇよ」
「ありがとうございます、気をつけて帰って下さいね」
「おう」
今まで一緒に帰っていた道のりを一人で歩くのは、苦痛以外の何物でもない。自分の家とは逆にある彼女の家まて送っていく柳生は、まさに紳士だ。
「ほんま最高じゃな」
好きな人は幸せになり、自分は惨めに一人悲しくとぼとぼと歩く。最高にハッピーで最高にバッドだ。
(あの隣にいるのが)
(俺だったらよかったのに)
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