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日がまた昇るってことは月が沈むってこと3
吉原に来て初めて見た太陽。初めて見た血だらけのじじ様。そっか、じじ様が負けたのか。ってことは銀時とツッキー達が勝ったんだ。
「行こっか」 「ちょ、放せ」
またもや神威に担がれてじじ様達のもとへ向かう。
じじ様は太陽に向かって手を伸ばしていた。
「我が天敵よ、久し振りに会っても何も変わらぬな。はるか高みからこの夜王を見下ろしおって、全くなんと忌々しい。だがなんと美しい姿よ」
さっき渇いたはずの涙がまた溢れてきた。いつからあたしはこんな泣き虫になったの?
「おろして」 「しょうがないなぁ」
神威におろしてもらってじじ様に駆け寄る。負けたはずなのにどこか清々しい顔だった。
「権兵衛か」 「じじ様おじいちゃんのくせに無理しすぎだよ。でも、よかったじゃん太陽見れて」 「そうだな」
微笑むじじ様の手を握る。みんな黙ってそれを見守ってくれてるのに邪魔する奴が1人。
「人とは哀れなものだね。己にないもの程欲しくなる。夜王にないもの、それは光」
全くこいつはじじ様を知ったように語るのはやめてもらいたい。でもあながち間違っていない。じじ様は太陽が欲しかったから日輪を閉じ込めてたんだ。
「そしてそれでもなお消えぬ光を憎み、愛したんだ。それを償うように権兵衛を拾い大事に育てた」 「‥‥」 「ククク、愛?一体そんな言葉どこで覚えてきた神威。権兵衛にそんな感情でも抱いたか?」
じじ様がぎゅっと握り返してくれた手に涙が零れる。爪をたてることしか出来ないって言いながらもあたしをこんなに大切にしてくれたんだ。
久し振りに強い奴と戦った疲れからか苦しくなり、意識もぼんやりしてきた。何で?さっきまではこんなことなかったのに。 最後の最後にじじ様に弱いところなんて見せられないから、丁度じじ様のところへ来た日輪と入れ代わるようにして離れた。
「あり?大丈夫権兵衛」 「‥‥お前、何かした、のか?」 「そりゃ喧嘩は吹っ掛けたけど、それ以外はなんもしてないよ?」
嘘吐いてる感じもないし何かをされた覚えもない。じゃあこの感じはなんだ? あ、れ、意識が‥‥
「じじ、様‥‥ツッ、キー、み‥な‥‥」 「どうしたんだろう権兵衛?まぁ連れていきやすくなったしいっか。気絶してるだけみたいだし」
権兵衛を肩に担いで、満足感に溢れているお侍さん達の雰囲気を壊しに行く。今直ぐにでもこのお侍さんと戦いたいけど、怪我凄いし楽しくなさそうだもんなぁ。どうせなら怪我してない元気なときに戦いたいし。今日は一先ず帰るか。
「おい、お前権兵衛をどうするつもりだ」 「そうじゃ、権兵衛の家はここだぞ」 「俺が気に入っちゃったから春雨に連れていくんだよ」 「嫌がってただろそいつ。放せ」
お侍さんと女達が刀を構えるけどみんな戦う体力はなさそうだ。そんな中1人だけ神楽が番傘で撃ってくる、のを避ける。まだまだ怒りにまかせてやってるだけで弱いね。阿伏兎は何をやってるんだ。
「ちゃんとケガ治しといてね。まぁ色々あると思うけど、死んじゃダメだよ。俺に殺されるまで」 「待て!権兵衛、権兵衛!くそっ!」 「神威ィィィィィ!」
お侍さんが追い掛けてこようとしたけど、お腹を抱えて踞った。その間に俺は屋根から飛び降りる。女達が追ってこないうちに阿伏兎のとこに行くか。
それにしても権兵衛はどうしたんだろ?俺が抱えてたのから解放されて番傘の下から出たときも一瞬苦しそうな顔してたよね。屋内ではそんなところ全く見なかった。権兵衛はもしかして‥‥。まぁ後で聞いてみよう。俺と口を利いてくれればの話だけど。
「で、なんだそのお嬢ちゃんは?」 「権兵衛は強いから気に入ったんだ。強い子生みそうだろ?まぁ最初は俺が暇なときに相手でもしてもらうよ。だからそのためにも阿伏兎が必要なんだ。上に話通しといてよネ」 「全く人使いが荒いなァ、このすっとこどっこい」
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