日がまた昇るってことは月は沈むってこと1




「銀さんんんん!」
「銀時‥‥!」


あっけなく鳳仙の旦那に蹴られ血だらけになった男。権兵衛は直ぐにでも男に駆け寄りたいんだろうけど、どうやら我慢してるみたいだ。


「あらら、いーの?権兵衛」
「あたしは何もしないよ、あの2人に関してはね。あたしは晴太を逃がす」
「出来るの?相手はかつての戦友どころか今の仲間だよ?まだ旦那についてる女はたくさんいるんだから」
「!」


仲間を殺されることをあんなに嫌がった権兵衛が仲間を傷付けるなんて出来るわけがない。


「もったいないね、権兵衛のその強さ。仲間なんてくだらないものに囚われてるとその強さも失われるよ」
「くだらなくない!仲間がいるから強くなれるんだ」
「でもその仲間が今は枷になってるじゃないか。そいつらのせいで救えるものも救えない」


邪魔なだけのそんなものは捨ててしまえばいいんだよ。


「それに仲間の仇である俺を殺さなくちゃいけないんだろう?さっきの続きしようよ」
「今あんたと戦ってる暇はない」
「何でだい?だって仲間を傷付けるなんてできないんでしょ?」


とか言ってる間に足音がたくさん聞こえてきた。まぁ旦那側の奴でも日輪側の奴でも権兵衛の敵ってわけじゃない。ただ権兵衛はなにもしないで見てただけなんだから。


「権兵衛がこないなら俺からいかせてもらうよ」
「っ!」


葛藤してる権兵衛に躊躇なく襲い掛かる。俺は戦うこと以外はどうでもいいんだ。


「あの子供を逃がしたいなら俺を殺してからにしなよ」


権兵衛に蹴りをいれようとしたところへ、勢いよく飛んできた物を首を傾けて避ける。


「待たせたな権兵衛」
「ツッキー!」
「おぬし、助けがいるか?」
「あたしは大丈夫だから晴太と日輪をお願い!こうなればもうお前を倒すことだけに集中できる」


心なしか権兵衛の瞳がギラリと光を放ったように感じた。さっきは迷いがあって動きも鈍かったけど、どうやら今度は楽しめそうだ。俺は嬉々としてさっきの続きを始めた。


「君は何でここに執着するんだい?」
「仲間がいて命の恩人がいるから。それにここはあたしの居場所なの。くっ」
「じゃあ仲間も命の恩人も居なくなったらここから離れる気になる?」
「はぁ、はぁ、なるわけない、でしょ」


地球産の考えることはよくわからない。まるで俺達夜兎とは逆だ。仲間とか恩人とかそんなものにとらわれていたら真の強さは得られない。


「だから今その両方で潰し合いしてるのも止めないんだ。居場所がなくなるわけじゃないもんネ」
「え!」


どうやら俺との殺し合いに夢中で周りが見えてなかったらしい。さっき来た女達と復活した男が協力して旦那と戦っている。慌てて下を覗き込む権兵衛。あ、今なら攻撃して気絶させられるかも。と思って気配を消して近付くと権兵衛は泣いていた。


「あり?どうしたの?」
「どっちにも死んでほしくない。どっちも守りたい。けどあたしには出来ない。こんなにも無力なんだ。情けない、自分が」
「じゃあもう見ないで逃げちゃえばいいヨ。俺と一緒に行けば苦しまないですむ」


そうやって手を差し伸べたけどまた刀を向けられた。つくづく嫌われてるなぁ俺も。


「お前は仇だって言ってるだろ」
「迷いのある奴と戦っても楽しくない。それに戦友と恩人の戦いの結末を見届けたくない?」


発せられていた殺気がちょっと弱まった。いくら見ていて辛くても見ないふりなんて出来ないはずだ。


「後で絶対殺す」
「楽しみにしてるよ」


刀を鞘におさめた権兵衛を抱き上げて、さっきまで座ってたウサギの像の上に連れていく。


「特等席だよ」
「有り難迷惑だ」


旦那が身体中にクナイが刺さりながらも笑っている。女達の顔には絶望が浮かんでいる。が、その中に強い意思を持った瞳がある。


「銀時‥‥」
「なかなか強いんだね君の戦友」
「‥‥侍、だから。強い信念を持ってんだ」
「へぇ」


侍、ねぇ。面白いじゃないか。俺達とはまた違った強さってのがあったのか。


そして何十年かぶりに吉原に太陽の光が射し込んだ。まるでお侍さんが輝いているようだった。























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