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大人の女に久し振りに会ったら変わらないねと言うのが常識1
「地球のことなんか全部忘れちゃえばいいんだ」 「そんなこと出来るわけない。もう1人にして。ほっといてよお願いだから。逃げるって思うなら縛っておいてもいいから」 「うーん、縛っておいてもいい、ねぇ。それはしないよ。まぁこの部屋の外に見張り立たせておくよ。俺は報告書を出しにいってくるから」
どうにか1人にしてもらい、ベッドにうつ伏せになる。涙すら出ない。松陽先生、あたしはどうすればいいですか?なんて、天人のあたしが聞いちゃいけないか。
∴∵
「自分から報告書書きに来るなんて珍しいねぇ団長。どういう心境の変化だ?」 「権兵衛に1人にさせてくれって頼まれてね」 「あぁ、あの嬢ちゃんが。ってことはあれか、夜兎だったのか?」 「夜兎と地球産のハーフだって。相当ショック受けたよ。でもそのおかげで地球に帰りたいとは言わなくなっし俺にとっては吉と出たわけだ。それに夜兎の血が流れてるから強い子を生みそうだしね」 「おいおい、酷い人だねェ。それに子供って本気だったのか」
まぁ団長が冗談でそんなことを言わないのは分かってるがね。それにしてもあの嬢ちゃんが気の毒だ。
「俺の子供なんだから絶対強いよ。そして親殺ししてきてもらって闘いたいな」 「まぁそれは自由だが、嬢ちゃんが嫌がるならやめてやれよ」 「それこそ連れてきた俺の自由だ。まぁまだ喧嘩の相手してもらうつもりだから大丈夫。じゃ、俺上に報告書出してくから」
全く自由な奴だなおい。振り回されるこっちはたまったもんじゃねぇよ。
「あ、後で部屋にご飯運んどいて。もちろん権兵衛の分も」 「へいへいわかりましたよコノヤロー」
∴∵
ガチャ
「落ち着いた?」
入ってきたと同時に聞いてくるあいつに頷く。実際1人になって落ち着けたから。
「そっか。もうそろそろご飯来ると思うけど食べられる?」 「‥‥‥何であんたそんなに優しくしてくれんの?」 「権兵衛が強いから」 「じゃあ強くなくなったら捨てる?」 「そうだね。権兵衛が強くなることをやめたら捨てるよ。弱い奴はいらない」
強さが全て。
なんてわかりやすいんだ。バカなあたしにぴったり。こいつが仲間を殺したのを忘れたわけじゃないけどこの際開き直ってやろうじゃん。
「じゃあ、強くなってあんたのこと殺してやるよ」 「ははは、面白いじゃないか。楽しみだ。ま、俺は殺せないけどネ」
ガチャ
「団長ー、飯持ってきてやったぜ」 「あー、ありがと」 「そういやさっき言ってなかったな、俺は阿伏兎だ。よろしくな」
大量のご飯を運んできた阿伏兎さんに自己紹介され、握手を求められる。
「権兵衛です。こちらこそよろしくお願いします」 「そんな堅くなんなくていいよ」 「え?それ俺のセリフじゃね?」 「こんな上司で阿伏兎さんも大変ッスね」 「だろ?上司がこんなだと苦労すんのは部下だ」
ほんとに可哀想に見えてきたよ。なんかもう疲れてますってのが全身から滲み出てるし。でも上司のこいつはいつの間にか飯食い始めてるし。
「権兵衛も早く食べなヨ。そんなおじさん放っといてさ」 「へいへい、おじさんはさっさと退散しますよ」 「え、あぶさんも一緒に食べましょうよ。こんな奴と2人なんて嫌ですよ」 「いやいや、あぶさん仕事だから」 「そうだよ。それにこんな奴ってなんなの?犯すよ?」
何だか物騒な言葉が聞こえてきたので黙る。
あぶさんが出ていって、凄い勢いでご飯にがっつくこいつと2人きりになる。あー、なんか見てたら胸焼けしてきた。あたしも結構食べる方だと思ったけど、上には上がいたよ。この細い体のどこにそんな量が入っていくんだ。
「食べないの?俺が食べちゃうぞ」 「食べるけど、あんたの食べ方が凄すぎて」 「夜兎は大食いなんだヨ。ま、俺はその中でも多い方だけど。権兵衛も夜兎なんだしいっぱい食べな」 「夜兎じゃないから、夜兎の血が流れてるだけだから」 「どっちもかわらないよ」
胸焼けはしてもお腹は空いてるわけでテーブルの上にところ狭しと並ぶ料理に箸をのばす。
「あ、おいしい」 「でしょ?春雨のコックは料理が上手いんだ」
確かにこれならいくらでも食べれるかもしれない。これから毎日このおいしいご飯が食べれるのか。
「ところでさ、権兵衛は何で攘夷戦争に参加したの?」
今まで纏っていた柔らかい雰囲気はなくなり、青い瞳が姿をあらわした。
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