試合を見に行くことにはなったけど、あたし1人じゃ到底行けはしないわけで。武蔵野で練習試合をすればいいのに、あまりやらないらしい。そこであたしは友達を誘うことにした。数少なくなった友達ほとんどに声を掛けたが、高校2年生がそんな暇なわけもなく、着いてきてくれるのは1人だけだった。


「あんたいきなり野球部の試合見に行くってどうした?好きな人でも出来たの?」
「違う。見に来てって頼まれたから」
「誰に!?」
「言わない」


なんだよー、なんて冷やかされるのわかってて言うほどバカじゃないよ。まぁこの子のことだから同じクラスの野球部に聞くんだろうけど。それは紛れもなく榛名なのだ。またそれを聞いて冷やかされるのは分かりきっている。


「その人絶対亀子のこと好きだよ」
「いや、違うよ。同情かもしれないし励ましかもしれないけど好意ではない」
「もー、照れんなって」


あたしは全く照れてない。けどこんな風に普通に会話してるだけで幸せな気がした。幸せなんていらないって言ったのにね。でもだからこそこんな小さな幸せでも充分。前までは当たり前だったけど、今はそれに幸せを感じることができる。変わらないって実は凄いことなのかもしれない。



▽△



「お前本当に試合見にくんの?」
「あんたが来いって言ったんでしょ?行かなくていいなら、この足引き摺ってわざわざ行かないけど」
「いや、来てもらいてぇけどさ」


今更冗談だってなんて言ったらどうしようかと思った。来いよ、なんて言っといて今頃なんなのだろう?


「お前が本当に来てくれてると思わなかったからよ」
「何それ?自分から言っといてどうしたの?この前は結構強気だったのに」


こいつの性格がよくわからなくなってきた。もっと俺様でプライドが高い奴だと思ってたけど、実は臆病者だったのか。でも見に来いよって言ったときは必死だったっけ。意外とプライドってものもないのかもしれない。


「じゃあ来週あんだけどよ、来れんのか?」
「うん、あたしにやることなんてないからね」
「んな悲しいこと言うなよ。絶対勝つからな」


別に勝っても負けてもあたしには関係ないし、どうだっていいのだ。なんてことはもちろん本人には言わないけど。酷いのかもしれないけど、応援しに行くわけじゃないしいいよね。



▽△



あたしと榛名が話すようになってから2週間くらいが経った。友達意外とはあまり話さなくなったあたしが男の榛名と話してるのが珍しいのだろう。この頃女子の一部が、あたしが榛名を狙ってるというような噂が流れている。というのを友達に聞いた。きっとその一部の女子の中に榛名のことを好きな奴でもいるからだろう、なんて簡単に予想できる。単純で嫉妬深くて臆病だ。好きならさっさと想いを告げればいいのに。でもそんな人達だってこの前までは友達だったんだ。過去形だけど、お互いがそう思ってたはずだ。だけど今は違う。あっちからすれば憎い恋敵で、あたしにとってはどうでもいい存在。
友達ってなんなの?




変わらない友情と変わってしまったナニカ














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