あの時話してから、榛名はあたしの中で理解者と認識されるようになった。時々会話するようにまでなった。榛名は怪我した後監督に捨てられ、他のチームに移ったらしい。でも移れてまた野球をやれるのだから幸せだ。あたしはもうやれないかもなのに。

バスケを手放してから1ヶ月が経った。もう1ヶ月というべきか、まだ1ヶ月というべきか。あたしにとっては後者だ。まだ1ヶ月しか我慢していないのに、もう体はバスケを求めてる。あのボールの感触をネットに吸い込まれていくときの音をもう1度、と。やはりそう簡単には忘れさせてはくれないようだ。でもこの足じゃ何もできない。やり場のない気持ちがあたしの中を支配する。これも、まだあたしが弱い証拠だ。今はまだ悪いことしかないよ。


「お前本当にもうバスケやんねぇの?」


その気持ちをさらに増大させるように、榛名は再び聞いてきた。あたしの中での榛名の位置付けはどうやら変わりそうだ。あたしがバスケをやりたくないわけないのに。榛名は理解してくれないのか。


「やらないんじゃなくてやれないの。この前も言ったけど」
「それは分かってんだけどよ、お前があんまりにもやりたそうな顔してるから」


榛名はバカそうに見えるけど、そういうことに敏感なのかもしれない。まぁ今のあたしは誰から見たってそう見えてしまうのだろうけど。


「なぁ、お前さ、今度俺の試合見に来いよ」


何であたしが。くだらない冗談ならやめてもらいたい。未だに松葉杖に頼らなければ歩けないのに、試合を見に行くのなんて殊更大変だ。


「嫌だ」
「んでだよ?バスケは嫌かもしれねぇけど、野球ならいいだろ?」
「そういう問題じゃなくて、」
「頼む!」


きっと、初めて榛名のこんなに必死な姿を見たからだ、あたしが頷いてしまったのは。それにあたしには休日にやることなんて何もないんだしいっか。



もうあの頃には戻れないと知った













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