「山田ー、お前俺と」
「泉!やった!」
「俺らは2番目だからな」
「はーい」
よかった、泉で。
頼れるし、田島みたいにうるさくないし、意外と優しいし!
「ずりーぞ、泉!」
「お前がくじ運ないのがいけねぇんだろー」
そーだ、そーだ!
って別にあたしとでもくじ運いいって言えないけど。
「阿部はもう行ったみたいだなー。そろそろ俺達も行くか」
「うん」
「いってらっしゃい花子」
「うん!また後で会おうね!」
ちよとばいばいして泉と山の中に入っていく。
「どこに行けばいーの?」
「わかんねぇけど、頂上付近にいるシガポから何かもらってくればいーらしいぜ」
「どこにいけばいいかわかんないとか、1人の人達可愛そうだね」
やっぱり微かな月明かりだけで山の中を進んでいくのは怖い。
今にも何か出てきそうだ。
無意識のうちに泉に密着してしまう。
ガサッ
「うぎゃ!」
「っと、」
いきなり音がしたからびっくりして泉に抱き付く。
それを泉はちゃんと支えてくれた。
「あっぶねー。大丈夫か?」
「ご、ごめんね泉。大丈夫。今の、野うさぎっぽいね」
「‥‥‥」
野うさぎにびびってしまった自分が情けない。
てか、泉黙っちゃったんだけど怒ってるのかな?
立ち止まったし。
「い、泉?」
「‥‥‥お前さ、俺なら安全だと思ってんの?」
「え?」
静かな山の中。
聞こえるのは虫の鳴く声と泉の声だけ。
「俺だってなぁ、男なんだよ!好きな奴に抱きつかれたら抑えきくわけねーだろ」
「わっ」
ぐいっと腕をひっぱられて、次の瞬間には泉の腕の中。
「男ってのは全員そうなんだよ。口には出さなくてもなぁ、あんま田島と考えてることなんて変わんねぇんだよ。俺だから大丈夫とか思ってんじゃねぇぞ」
泉のせいで自分の心臓が凄い速さで脈うってるのを感じる。
泉のであろう香りが鼻を掠めて、耳に入ってくるのは泉の声。
今あたしは泉だけを感じてる。
「‥‥あたしね、泉なら大丈夫とは思ってないよ。泉ならいいと思ってるの」
「‥‥それって、期待していいってことだよな?」
「うん」
もっとぎゅっと抱き締めあって、お互いの体温を感じた。
あたし今すっごい幸せだ。
「おーい、泉と山田ー、らぶらぶなとこ悪いけど、もうそろそろ降りようか」
「え!先生いたの!?恥ずかしい!」
「先生ほっといてくれりゃよかったのに」
「ぐだぐだ言わないとさっさと降りるぞー。お前ら1番最後なんだからな」
びっくりしたー。
しかも思いっきり抱き合ってたし!
でもまぁ、志賀先生だしいっか。
いずみんだって狼なんだ!
名前で呼ばせたかったけどなんとなく‥‥