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「おじゃましやーす」
相変わらず何もない元希の部屋。
必要以外の物を置かないのは、片付けをできないからなのをあたしは知っていたりする。
「俺シャワー浴びてくるな」
「うん」
元希の家は自分の家と同じじようなもんだから、勝手に冷蔵庫を開けて麦茶を出す。
どこに何があるのかは大体把握してる。
元希もまたそうなんだろうけど。
「ふわぁ。なんか眠いなー」
▽▽▽
「なみー。お前もシャワーあびるか?」
「‥‥」
「あれ、寝ちまったのか」
自分の部屋に戻ると、なみは俺のベッドで寝てた。
これなんかカレカノみたいでいいけど、理性もたねぇだろ。
こいつやっぱ俺のこと男として意識してねぇな。
ちょっと思い知らせてやりてぇけど、駄目だ、歯止めきかなくなる。
こいつも疲れたんだろうし、寝かせといてやるか。
▽▽▽
「ん、ふぁ‥‥元希?」
「おう、起きたか」
「あっ、ごめん寝ちゃった!マッサージしなきゃ」
「あー、別になみも疲れてんだろうしやんなくてもいいよ」
こいつ寝起きだし、今マッサージとかされても変に意識するし。
「駄目!やるために来たんだからやる」
「そ、そうか?なら頼むわ」
「じゃあはい、元希ベッドに寝てー」
「おー」
うわ、ベッドになみの温もりが‥‥!
そうだよな、今まで寝てたんだもんな。
「ではでは失礼しまーす。重いのは勘弁してね」
「っ」
俺の上になみが跨がってる‥‥!
駄目だ駄目だ駄目だ。
意識すんな、いつものことだろ!
分かってるけどこいつんこと好きって意識しちまったからには無理だ。
「気持ちいい?」
「お、おう」
「肩凝ってるねー。ほんとに80球以上投げて大丈夫なの?」
「おう」
やめてくれ、俺に話し掛けんな。
それに気持ちいい?とか聞くんじゃねぇよ!
変な風に聞こえんだろが!
これはねーちゃんこれはねーちゃんこれはねーちゃん。
▽▽▽
「よし、終了ー」
「はぁ。ありがとな」
天国でもあり地獄でもあった時間はようやく終わった。
我慢し通した自分を誉めてやりてぇよ。
「じゃ、あたしそろそろ帰るねー。今日は親帰ってくるし」
「おー。じゃあな」
「あ、今日の元希かっこよかったよ」
「なっ!」
言うだけ言うと、なみは直ぐに出ていきやがった。
んだよ言い逃げかあいつ!
でも嬉しくねぇわけがねぇ。
最後にしてやられた。
今日は最後までにあいつに振り回されっぱなしだったな。
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