さっきから視線が物凄く痛い。その視線の元を辿らなくても、今この俺の部屋にいるのはジェニファーと俺だけなわけで、犯人なんて探すまでもない。始めは俺の自意識過剰かと思って気にせず野球雑誌を読んでたけど、もういい加減気になってきた。


「さっきからそんなガン見して何だよ」
「あぁ、気にしないで」
「いや、すっげぇ気になんだけど」
「もー、元希は我慢出来ないんだから」


そういう問題なのか?こんなガン見されたら誰でも気になるっつの。それでもまだガン見してくるジェニファー。


「で、なんだよ」
「いやー、元希猫耳似合いそうだなって」
「もっかい言ってくんね?」
「元希猫耳つけない?」


明らかにさっきと変わってんだろ!つか猫耳?猫耳ってあの猫の耳?俺が猫耳似合う?俺が猫耳付ける?


「するわけねぇだろ」
「えー!折角持ってきたのに!」
「持ってきたのかよ」


何だこいつ。ほんとにバックから猫耳出してきたし。それどころか尻尾まで出てきたし。「じゃーん!」とか笑顔で言われても。


「元希は性格的に狼かなーと思ったけど、大丈夫、つり目だし猫耳も似合うよ」


そんなウィンクしながら親指たてられても!何も大丈夫じゃねぇよ。寧ろお前が大丈夫かよ。本気で心配してる俺に猫耳を手渡してきたジェニファー。


「だから俺つけねぇって」
「何で!やっぱり狼がよかったの?でも今はこれしかないから我慢して。あ、元希我慢出来ない人なのか」


狼の耳も持ってんのかよ。何?こいつの趣味コスプレだったのか?初めて知ったわ。


「お前が我慢すればいいだろ」
「いっつもは我慢してんだから今日ぐらいいいじゃん‥‥あ、そっか、榛名はあたしのこと嫌いだから、」
「なっ!別にそういう訳じゃねぇよ」
「じゃあ付けてくれる?」


くそっ、何だこの可愛さは。多分俺は今まんまと騙されてんだろうけど。それは分かってっけど。これが惚れた弱みってやつか?


「しょうがねぇな」
「わーい!」
「ただ、俺がつけたらお前もつけろよ」
「え」


でもやっぱやられっぱなしじゃ面白くねぇからな。俺は根っからの負けず嫌いらしい。全力で猫耳をつけることを拒否するジェニファーから猫耳を奪って自分の頭につける。恥ずかしいとかはこの際気にしない。


「おら、見たか?じゃあ次お前な」
「え、待ってよ!まだ写メってない。元希かわいすぎる!」
「写メるとかなしな。俺つけたんだから早くお前もつけろよ」


携帯を一生懸命弄くっているジェニファーの頭に猫耳をつける。何だよ、お前のが似合ってんじゃん。やべ、なんかムラムラしてきた。


「ちょ!元希!何で押し倒すの!?」
「いや、さっきお前言ってただろ?俺は狼っぽいーって。だから狼らしく子猫でも襲ってやろうと思って。あ、猫耳とんなよ」
「やだよ、恥ずかしい」


猫耳を必死に外そうとするジェニファーの手を掴み、押さえつければ反抗的な目で睨まれる。こいつ絶対俺のこと煽ってるだろ。確かにジェニファーが言ってたの当たってるかもな。だってもう我慢すんの無理だし。ってことで、俺はジェニファーの唇に噛み付いた。





(んあっ、や、だぁ)
(猫なんだからにゃあだろ)








 




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