どうしようどうしようどうしよう。
今日は隆也の誕生日。
の次の日である。
あたしは22日だと思ってたんだけど、実は11日だったらしい。
水谷に山田は何かあげたの?と聞かれてやっと気付いたあたし。
水谷いつもクソレとか言ってごめん。
たまには役に立つんだね。
くそう、隆也のお母さん何であと10日遅れで生まなかったんだ!
寧ろ水谷がその日のうちに言ってくれれば!
水谷やっぱりお前はクソレだ。
とか八つ当たりしても現状は変わらない。
どうりで隆也の機嫌が昨日から悪くなり始めたわけだ。
そりゃ彼女に誕生日忘れられたらほとんどの彼氏が怒るよね。
でもその怒りを沈める方法はあたしにはわからない。
何せあと10日もあんじゃんと余裕をこいていたから誕生日プレゼントなんて全然用意してない。
よし、先ずは頼れる部長に相談しにいこう。

と思ったけど、花井のとこに行くと必然的に隆也もいるわけだ。
ということは千代のところにもいけない。
やばいな。
同じクラスにも野球部はいるけど。
田島は何か変なこと言いそうだから駄目だし、泉は協力してくれなさそうだし、三橋は言うまでもないし。

あ!浜ちゃんがいるじゃん!


「浜ちゃーん!」
浜「おー、山田、どした?」
「実はですね、昨日隆也君の誕生日だったんですけど、あたしは22日だと思ってたから何もしてないわけなんですよ。浜ちゃんヘルプスミー!」
浜「ヘルプミーな」


流石浜ちゃんツッコミが鋭い!
けどあたしが欲しいのは鋭いツッコミじゃなくてアドバイスだから!


浜「それお前が悪いんだから謝って許してもらうしかないだろ。阿部許してくれなさそうだけど」
「でしょ!絶対あの隆也が許してくれるわけないよ!あー、破滅やー」
田「どったのジェニファーー!」
三「だ、だいじょぶ?」
泉「どうせまた宿題忘れたとかじゃねぇの?」


あたしが絶望していると呑気な奴等がノコノコとやってきた。
あ、三橋は心配してくれたからいーけど。
そして3人にも訳を話すと意外にも色々と考えてくれた。


田「やっぱあれだろー!忘れちゃたかわりにあたしをア・ゲ・ル。みたいな」
「うん、そういうだろうなとは思った」
浜「だな」


いくらなんでもそれは出来ない。
恥ずかし過ぎて死ぬ。
それに隆也にひかれそうだし。


浜「でも普通にプレゼントあげても許してくれねぇだろうな」
泉「じゃあもうボケ通して22日に渡せば」
「それもう隆也キレるっしょ」
「もうキレてんだけど」


え?
まさかこの声は。


「隆也っ!?」
阿「お前彼氏の誕生日も忘れて他の男と話してるってどうよ」
「いや、違うんだよこれは!」
阿「いーからちょっとこい」


連れていかれるあたしに浜ちゃん達はにこやかに手を振るだけ。
三橋は1人オロオロしてるけど。


「ちょ、みんなヘルプスミー!」
「「ヘルプミーな」」


浜ちゃんのみならず泉まで鋭いツッコミを‥‥!
でもそんなのいらないからまじ助けて。
もう授業始まるのに隆也屋上向かってるっぽいし。


「隆也ごめん!後で何でも買うから教室戻ろうよ」
阿「何もいらねぇ」
「でも、授業が」


屋上へと続く階段の踊り場でやっと隆也は立ち止まった。
チャイムが鳴って廊下にいた人もみんないなくなったから、あたし達の声だけが響く。


「ほんとごめん、あたし22日だと思ってて」
阿「それは別にいーけど、お前あんま他の男と話すなよ」
「ごめん、隆也のこと話してて」
阿「他の奴らんとこ行く前に俺に謝ればいいだろ。まぁでも田島の提案は採用してやってもいいな」


え?
田島の提案ってあのあたしをアゲル作戦?
田島がいかにも言いそうで、あたしが恥ずかしくて絶対できないあの?


「もしかして隆也、話し聞いてたの?」
阿「俺ジェニファーが浜田に話しかける前から用があって9組にいたからな」
「え!」
阿「お前ら声でけぇから全部聞こえんだよ」
「えぇー!やっぱり花井のとこに行けばよかった」
阿「で?俺は田島の意見に賛成なんだけど」


えー、隆也ひくと思ってたけど、寧ろ希望してるよ!?


「いやいや無理でしょ。落ち着くんだ隆也君」
阿「俺はいたって落ち着いてんだよ」


ニヤニヤしながら迫ってくる隆也。
逃げたくても後ろは屋上への扉だから逃げるところなんてない。


「ちょ、待って何でも買うからまじで」
阿「だから何もいらねぇって。お前だって金使わなくてすむんだからいいだろ?別に減るもんじゃねぇし」
「いやいやいや、確実にあたしの中の何かが減るから!」
阿「まぁ忘れたお前がわりぃんだからもう諦めろ」





言うまでもなくあたしは隆也においしくいただかれてしまいました。
もうこれで隆也の誕生日は絶対に間違えないだろう。



お金じゃ買えないものがある


あべべおめでとう!
いや、決して忘れてたわけでは、




 




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