「うわぁ!元希、ほんとに雪降ってきたよ!」
「あたりめぇだろ。降ってもらわなきゃ何で練習なくなったかわかんねぇよ」


土曜日はいつもなら野球部は練習があるけど、今日は雪が降るって予報だったからなしになった。
だから元希は今あたしの家に来ているわけだ。
久しぶりのお家デートで嬉しいあたしとは反対に、元希は機嫌がよくない。


「ったく、こんぐれぇの雪で練習中止にすんなよな、テラダーの奴」


ほらまた。
さっきからずっとこう言ってる。
何か言っても返事は曖昧だし。
確かに元希が野球バカなのは知ってるけど、これじゃあたしとなんていたくないみたいじゃん‥‥!
もしかしたらほんとにそう思ってるのかな?

そんなことを考えたら寂しくなってきた。


「そんな練習したいなら1人でしてくればいいじゃん」
「はぁ?お前が会いたいっつったんだろ」
「そうだけど、会いたがってたのあたしだけみたいだしもういいよ。無理矢理誘っちゃってごめんね。じゃあばいばい」
「なっ、お前「早く帰ってくれない?」


冷たく突き放せば、元希は無言のまま出ていった。

あたし、最低だ。
自分から誘っといてあんなこというなんて。
本当は帰ってほしくない、けど、今さら引き留めることもできない。
きっと元希に嫌われちゃったな。


こんなことになるなら、雪なんて降らなければよかったんだ。
何で練習中止にしたんだよテラダーの奴。

静かな部屋にあたしのすすり泣く声だけが響いた。



▽▽▽



「ん、」


気付けばあたしは寝てしまってたらしい。
携帯を開くと、画面には14:00という文字と着信履歴。


「元希、からだ」


よかった。
電話に出てたらきっと、別れようっていわれてた。
あたしは元希のこと好きだから別れたくない。
でも酷いこと言ったのは自分だ。

安心していられたのも束の間、また元希から電話が掛かってきた。
出たくない。別れたくない。
でもしょうがないよね、今逃げてもどうせ月曜日には学校で会うんだから。

さっきのことが夢だったらよかったのに。


「‥‥もしもし」
『ジェニファー、』
「ごめんね元希、今までありがとう。あたし元希のこと好きだったよ」
『!』
「じゃあ」
『待てよ。何で過去形なんだよ。今までありがとうってなんだよ』
「何って、別れるんでしょ?」
『なっ!?悪かったって!さっきはちょっとイライラしてて、』
「何で元希が慌ててんの?あたしのこと振るために電話したんでしょ」
『ちょっと待てって。お前何か勘違いしてんだろ?1回外出てこい』
「何でよ」
『俺はここで2時間も待ってんだよ!』


それを聞いたあたしは急いで家の外に出た。
そこには鼻と手を真っ赤にした元希。


「何で、元希ここにいるの?」
「お前に帰れって言われて本当に帰ってやろうと思ったけど、俺が悪かったって気付いた。だから謝ろうとして電話してもお前出ないし、インターホン押しても無視されるし」
「ごめん、あたし寝てて。でも1回帰ればよかったのに」
「‥‥これ、作ってたんだよ。雪降ったからな」


元希の視線を追ってみれば、そこには小さな雪だるまが2つ。
元希も可愛いことするよね。
だからあんなに手が赤いのか。


「寒いのにこんなの作って、ほんと元希バカ‥‥‥バカすぎるけど、嬉しいよ」
「バカはお互い様だろ。勝手な勘違いしやがって」
「あはは、そうだね。でも、ありがとう元希」



やっぱりあなたと離れるなんて出来ないよ。



雪に託した恋心

(よし、雪合戦やんぞ)
(は?やだよ、ちょ、ぶふっ)





いきなりの雪に思わず触発されました
榛名が黙々と雪だるまを作ってたらかわいいな














 




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