幼馴染みなんて年を重ねていくうちに関係も薄れていくんだよ。

なんて小学校の頃に友達に言われた。
その時は少し寂しいと思ったけど、そういうものかと納得した。
何せあたしの幼馴染みは元気でやんちゃで運動神経抜群の悠一郎だ。
女子にも男子にも人気だからあたしなんてかまわなくなるだろう、と思ってた。


でも、それは違った。
中2になった今でも悠一郎とは仲良くて、親が帰って来ない日は田島家に泊まりにいったりもする。

でもそのせいで友達に田島と付き合ってるの?ってよく聞かれる。
付き合ってるわけないのにね。
あたしたちはそんな関係にはなれないんだと思う。



▽▽



「お前らってほんと仲良いよなー」
「まぁ幼馴染みだから」
「いーだろー!」


教科書を借りに来た悠一郎と話してたら、隣の泉に言われた。
ちなみに悠一郎は隣のクラス。


「よくうちに泊まりにくるもんなっ」
「えっ、あ、うん」
「まじ!?」


あたしはあんまり言わないようにしてたのに悠一郎は普通に言っちゃうし。
泉すっごい驚いてる。
また誤解されるかもなのに。
悠一郎は気付いてないの?


「あ!チャイムなった!俺戻るな」
「おー、じゃーな」


正直あたしは今の関係をあんまりよくおもってない。
悠一郎といるのは楽しいし、一緒にいたいとは思うけど‥‥。


「お前好きな奴とかいねぇの?」
「うーん、いないかな」
「まぁあんなモテる田島といたらそーなるか」


やっぱり田島モテるんだ。
あたしには教えてくれないけど、告白だっていっぱいされてるだろう。
彼女ができたら泊まりに行くこともなくなって、そのうち話すこともなくなっていくのかな?
でも幼馴染みってそういうものだよね‥‥‥?


そう考えたら悠一郎とうまく接することが出来なくなった。
いつもみたいに話したいけど、なぜかそれができない。
話しかけてくる悠一郎に冷たく返すことしか出来なかった。
しょうがない、いつかこうなるってわかってたんだから。

1週間ずっと避け続けたからそろそろ悠一郎も話し掛けてこないだろうな。
そう思ってたけどいきなりあたしのいる教室に入ってきた悠一郎に腕をひかれて、みんなに冷やかされながら誰もいない廊下に連れてこられた。


「なに?もう授業始まるよ」


もし、何で避けんの?とか言われたら理由も全部話そう。


「俺さ、告白されたんだ」
「へぇよかったじゃん。言うことそれだけならあたしもう戻る」


悠一郎の横を通り過ぎようとしたけど腕を捕まれた。

何でそんな真剣な顔してるの?


「付き合おうかなって考えてる」
「それがなに?勝手に付き合えばいいでしょ!そしたらあたしだってもう悠一郎の家行かないし、話さないから。あたしたちはただの他人なんだからさ」


避けといてよかったのかもしれない。
仲が良いときにこんなこと言われてたら‥‥。
あー、これでほんとに悠一郎と話すこともないな。
ちょっと寂しい、寂しいけど、


「じゃあ、何で泣いてんの」
「泣いてない」
「泣いてる」
「泣いて、な」


掴まれてる腕を引き寄せられて、気付けば悠一郎の腕の中。


「なにっ、離してよぉ。あんたつきあうんでしょ!」


涙は止まらずに溢れてくるし、何でこんなことされてんのかもわからない。
あたしは悠一郎を嫌いにならなきゃいけないのに‥‥!


「ごめん、ほんとは付き合ったりしねぇ!俺はお前のこと幼馴染みとか関係なく好きなのに、泉から好きな奴いねぇって言ってたって聞いたから。なんか、悔しくて、」
「‥‥なんだよぉ、あたし、悠一郎にっ彼、女ができたらって考えて、たときにっこんなこというから、うぇ、ゆういちろ、の、ばかぁっ」


安心と嬉しさで涙がさらに溢れてくる。
なんだあたしは悠一郎が好きだったんだ。


「お前だって好きな奴いねぇとか言っただろ」
「う、ひっく、だってあたし悠一郎のことっ好きだと、思ってなかったから」
「何だよそれ!まぁわかったら泣き止めって」


そんなこと言われたって直ぐに泣き止めるわけなくて、あたしは悠一郎を抱き締め返した。




それからあたし達は付き合い始めて、前よりもっと仲良くなった。
それにみんなにも付き合ってることを言った。
また悠一郎が告白されたら嫌だからね。

悠一郎の罠にまんまと嵌まったわけだけど、両想いだって気付いたからいいかな。




逃げるウサギと甘い罠





企画「君のとなり」提出






 




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