「ジェニファーー!」

昼休み、他の野球部の2人は疲れて寝てるのにこいつだけは何故か元気だ。

「ポッキー!」
「は?何?くれんの?」

嬉しそうにポッキー片手に駆け寄ってきた。
たまには使えるな田島も、丁度甘いもの食べたかったんだ。

「ちげーよ!いや、やるけど!ポッキーと言ったらなーんだ?」

ちげーけどくれるって何。
どうでもいいから早く欲しい。

「知らん」
「はぁ!?何言ってんだよジェニファー。ポッキーゲームに決まってんだろ!」

いや、そんな真面目に驚かれても。
何かよく分かんないけど周りのみんなもびっくりしてるよ。

「ポッキーゲームって何?」
「ポッキーゲームっていうのは、俺がこっちからポッキーをくわえて、」

あむっ、とポッキーをくわえる田島。
ちょっと小動物みたいで可愛いな。

「そっちの端からジェニファーがくわえんの!」
「は?」
「だから!俺みたいにそっちの端をくわえて、2人で真ん中まで食ってくの」

ポッキーをくわえながらも、器用に喋る田島。
いや、やらないよ?
周りから、あの2人付き合ってんの?って声が聞こえるじゃん。
あたし達付き合ってもないから。
こんなことやる必要ないから。

「やだよ、普通に食べたい」
「むり!」

ポッキーをくわえたまま迫りくるバカ。
何一つよくない!
周りからの目線と冷やかしが凄いよ!

「のわっ」
「ほらくわえろジェニファー」

両肩を掴まれて逃げられなくなった。

「じゃあいーよやらなくても」

よかった。
でも、それなら何で肩を掴んだんだよ。

「その代わりちゅーしようぜ」
「やだよ!」
「じゃあくわえろよ」
「それもやだ」
「どっちか!」

こいつは我儘だからこうなったらもうひかないだろう。
だけどこっちだってやるわけにはいかないんだよ!
ちゅーなんてするか!あたしは初なんだよ!

「てか、何でそんなことしなくちゃなんないの?あたしに選択肢ないじゃん」

だって結局ちゅーすることになるし。
でもこのまま誤魔化せば、昼休み終わるから逃げられる‥‥!

「俺昨日試合で頑張ったからご褒美!3点もとったんだぜ!」
「そんなの知らないよ!そろそろ授業始まるし、田島席戻れば?」
「俺ジェニファーがやってくれるまで戻らねぇ」
「あー、もうわかったよめんどくさいな」
「まじ!」

ようは、ポッキーのはしをくわえてすぐ離れればいいんだ。

「いくよ?」

そう言って、くわえた。
瞬間離した。
はずだった。

「え!」

がしっ、と後頭部を掴まれて、ポッキーを口から抜けなかった。
驚いてる間にも田島はポッキーを食べ進めてきてるわけで。
やばいやばいやばい!

「やだっ、やめて田島!」

ギュッと目を瞑って、口をかたく結ぶことしかできない。
もう間近に田島の顔があるのがわかる。

「え?」

結局は唇に何も触れないまま、田島は離れていった。

「はは、実はしてほしかった?」
「ばっ、違うよ!」

悪戯っぽく笑う田島。
してやられた感がたまらなく悔しいけど、安心した。

「ジェニファーが可愛すぎて、ちゅーしたら止まらなくなりそうだからやめといた。あ、言っとくけど俺好きじゃない奴にこんなことしねぇから」

それだけ言って自分の席に戻るとかずるすぎるでしょ?
あんなことされて、あんなこと言われてドキドキしない方が無理だから。

やっぱり田島は可愛い小動物なんかじゃなかったってことだ。








田島は天然バカなふりして実は確信犯。






 




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