ちーず! |
ロココたちリトルギガントに勝ち、FFIに優勝したイナズマジャパンは、祝賀会やら表彰やら諸々の為今しばらくライオコット島に滞在することとなった。 今回はサポーターとして来ていたリカと塔子はホテルをチェックアウトし、宿舎に一緒に泊まっている。 これはそんなある日のお話。 「なぁなぁ、今日は午後から予定ないんやろ?」 「だと思うけど・・・。どうかしたのか?」 昼食中、雑誌を片手に身を乗り出したリカに守が首を傾げる。 その言葉を待ってました!とばかりにいそいそと雑誌を開いてテーブルに広げるリカに、何だ何だと皆が寄ってきた。 「このショッピングモールに、ライオコット島限定のプリクラあるんやって!今やったらサポーターの人らもほとんど帰って空いとるやろうから、みんなで行こうや!」 「わあ、限定のプリクラですか。いいですね!ねね、皆さん行きましょうよ〜」 「プリクラねぇ。別にいいけど、急にどうしたんだよ」 行動力のあるリカに春奈ちゃんが加わりきゃいきゃい雑誌を覗き込む。 その横で、リカに振り回され慣れてしまった塔子が訝しげに口を開いた。 「だって、このメンバーで撮ったことないやん。それに・・・ごんべ、ちょお携帯貸して」 「メールとか見ないでよ」 「見ーへんから安心しい。用があるんは、この待ち受けや」 「待ち受け?ーーってだめ!」 「ごんべ?」 立ち上がったわたしに塔子が首を傾げるが、それどころではない。 何も考えずに携帯を渡してしまったが、待ち受けは確か・・・! 「みんなもこれ見てみ。ずるいと思うやろ」 わたしの手から逃れるようにひらりと立ち上がったリカは、集まっていたみんなに見えるように携帯を開いて突き出した。 「お、これライオコット島来る前に風丸と三人で撮ったやつじゃん。ごんべ待ち受けにしてたんだな」 開かれた待ち受け画面には、守の言うとおり。 ライオコット島に来る前、細々したものを三人で買いに行った時に立ち寄ったゲームセンターで撮ったプリクラだった。 最近のプリクラはシールにするだけでなく、画像を選んで携帯に送ることが出来る。 どうせだからと保存したものだが、普段なら待ち受けにすることはない為うっかりしていた。 「なんで待ち受けにしてるんだよ・・・っ」 みんなの視線が痛い。守は自分の携帯を取り出してこんなのもあるんだぜーと楽しげだが、一郎太は視線から逃げるようにして睨んできた。 「だって・・・。ガルシルドのところで、寂しかったから・・・」 普段ならば絶対にしないが、ガルシルドのところへ行き、練習時以外は地下に籠もり話す相手も禄にいない状況が続き、さすがに寂しかったのだ。 自分で選んだこととはいえ、それまで大人数の中にいたのにこの落差は大きかった。 電波の届かない地下で、画像フォルダの中に見つけたプリクラ。わたしを真ん中に顔を寄せ合い笑う三人の姿に、気づけば待ち受けに設定してそのまま忘れていた。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 寂しくてついとか、子供じゃないか恥ずかしい。と思っていれば、何故かその場が静まり返った。 そして。 「行くか」 「行きましょう!」 「行こうぜ!」 何故かいきなり乗り気になったイナズマジャパンがいた。 *** そして来たはいいが、いきなり大きな問題に直面している。 「・・・名無し。オレはプリクラというのをしたことはないが・・・これに、この人数が入るのか」 「どう考えても無理かな」 そうだ、どうして誰も気づかなかったのか。 夕香ちゃんが興味を持つのはもう少しだけ先だろうから知らなくても無理はないが、そんな豪炎寺くんにも無理だと解る程度には、プリクラ機が小さい。 いや機械自体は日本で見るものとほぼ変わらないが、この大人数が入るはずがない。 「とりあえず数組に別れて撮影するのが無難だろうな」 鬼道くんの言うとおり、それしかないだろう。 それが妥当だろう、と各々に固まり、さてわたしはどのグループに入ろうかと見回していれば、横から大きな手で腕を引かれた。 「染岡?」 「名無しはこっちに入れよ。女子がいなくちゃ操作わかんねぇだろ」 「ああ、染岡プリクラなんて縁がなさそうだもんね」 「うるせえ。ほら、来いよ」 「あ、僕もごんべちゃんと撮りたいな。いいでしょ染岡くん」 「吹雪なら小柄だしぎりぎりいけるだろ。・・・おまえらは無理だ」 豪炎寺くんと鬼道くんに断りを入れた染岡に着いていけば、物珍しそうに見渡す土方くん、立向居くん。そして頭の後ろで手を組んだ綱海がいた。 「綱海ならプリクラ撮ったことあるんじゃない?」 「あるけどいつも女子に任せっぱなしだったから、操作はわかんねー!」 堂々と言い切った綱海の横で、手慣れたように士郎くんが料金を入れる。 これ士郎くんがいればわたしがいなくても問題ないような気がするのだけれど。 「ほらごんべちゃん、背景どれにする?」 「あ、スタジアムもありますよ!どれにしますかごんべさん」 画面を覗き込んでそれぞれ指さす彼らが楽しそうなので、いいか。 そうしてしばらくグループの組み合わせを変えつつ撮影していたのだが、しばらくしたところで首謀者が声を張り上げた。 「全員集合ー!最後はみんなで撮るでー!」 「いや無理でしょ、どうやって入るつもりだよリカってば」 「そんなん気合いや気合い!ほら、早う入って、奥からな!出来るだけ詰めや。いけるんやったら肩車や!」 「うわわっ」 リカが次から次へと選手たちを放り込み、わたしも引っ張られぽいっと投げられる。 満員電車なんてレベルではないすし詰め状態で、押されるがままに最前列、カメラの正面に膝をついた。 「大丈夫かごんべ」 「守・・・。大丈夫、・・・ありがとね」 圧迫感が少し和らぎ、不思議に思い顔を上げてみれば。すぐ隣には守がいて、わたしを守るように腕で囲ってくれていた。 「あーもう狭いわ!腕当たってる!ごんべ背景選んで!その島全体のん」 「この人数じゃ背景意味ないんじゃ・・・」 「ええから早う、圧迫死してまう!」 腕を伸ばしてパネルをタッチすると、カウントが始まる。 隣の守を見れば髪がぼさぼさで、ちょちょいと直してやれば嬉しそうに笑った。 それを見て、ふと在りし日の光景を思い出す。 「守、これはお礼ね」 「へ・・・・・・」 フラッシュが焚かれ、撮影が終わるなり雪崩が起きたかのように転がり出た。 さすがに落書きスペースに全員入ることは出来ないので、リカと春奈ちゃんが入り。残りのメンバーはやれやれと汗を拭ったり、今まで撮ったものを眺めたりカラーコピーをとったりと様々だ。 「ごめんね。秋、夏未、冬花ちゃん」 落書きしている二人を除いた女の子たちが固まっているところで謝ると、名前を呼ばれた三人がきょとんと目を丸くする。そしてそれと同時に・・・。 「「きゃー!」」 仕切りの向こうから甲高い悲鳴というか歓声が上がった。 「お礼だから、ね」 全員が声の方を向く中呟いて、その後に起こるだろう騒動に巻き込まれないよう、その場を静かに後にした。 頬が緩んでついつい笑ってしまうわたしを、通行人が不思議そうな顔で見ていた。 ___ 梨叉さんリク「みんなでプリクラ」でした。せっかく細かい内容頂けたのに、変えてしまって申し訳ありません・・・!円堂さんに何をしたかは、ご想像の通りということで。素敵なリクをありがとうございました! 2012.02.15 Back |